米国離脱後の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加11カ国による首席交渉官会合が12〜14日、神奈川県の箱根で開かれ、早期発効に向けた具体的な選択肢の検討に入る。中国がアジア太平洋地域で覇権主義的な動きを強める中、TPPで合意した自由で公正な貿易・投資ルールの重要性は高まっている。日本は欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が大枠合意した余勢を駆って、交渉を加速したい考えだ。

 「TPPの今後の選択肢について、12日から開かれる会合で本格的に検討する。日本がリーダーシップを発揮して早期発効に向け議論を主導していきたい」

 安倍晋三首相は6日、ベルギーのブリュッセルで開かれた日欧定期首脳協議後の共同記者会見で、強い期待感を示した。

 TPP参加11カ国は5月にベトナムのハノイで開いた閣僚会合で、協定発効に向けた検討を11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに終えることで合意した。日本が議長国を務める箱根の会合はそのキックオフとなる。

 11カ国協議では、米国が参加に転じた場合に合流しやすいよう、米国を含む12カ国で作った現行の協定文はいったん凍結し、米国抜きでは成立しない発効要件などを修正した合意文書を新たに作る形式をとる。

 各国の足並みを乱さないため合意内容の改定は最低限にする方針で、関税分野は特に変更しない。ただ、ベトナムやマレーシアなど米国抜きの発効に慎重な国々から理解を得るべく、バイオ医薬品のデータ保護期間など、米国の強い意向で盛り込んだ項目は一部変更する方向で調整する。

 中国が現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を打ち出して存在感を強める中、日本が目指す日米主導の貿易秩序の構築は、トランプ米政権のTPP離脱で暗礁に乗り上げた。中国主導の透明性が低い貿易秩序が地域の“標準”になる恐れがある。

 日欧EPAの大枠合意で巨大自由貿易協定(メガFTA)の機運は再び盛り上がりつつある。11カ国でのTPP合意をまとめられるかが、アジア太平洋地域の方向性を左右しそうだ。

http://www.sankei.com/smp/economy/news/170709/ecn1707090011-s1.html
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