http://www.bbc.com/japanese/40579491

早寝か夜更かしかなど、人間の様々な睡眠習慣は、先祖に原因があるのかもしれない。

就寝時間が少しずつずれていく眠り方は、私たちが集団で暮らし、野生動物に襲われないよう見張り番が必要だった遠い昔には、役に立ったかもしれないと研究者たちは言う。

今も狩猟と採集で暮らすタンザニアのハズダ族とその睡眠を、カナダ・トロント大学の人類学チームが調べたところ、20日間にわたり、誰かが常に起きていることが分かった。研究報告は英王立協会紀要に発表された。

「約200時間にわたり観察し続けたところ、全員が同時に眠っていたのはわずか18分に過ぎなかった。それは全体の0.001%の時間に過ぎない」。研究を主導したデイビッド・サムソン博士はこう説明する。
「中央値をとると、夜間のどの時間帯でも常に大人8人が覚醒していた。これは、集落の成人人口の4割に相当する。それだけに、同じ集団内で睡眠時間がほとんど一致していなかったのが、とても以外だった」

過去の研究によると、人間の概日リズム、もしくは体内時計の4〜7割は遺伝によって決まる。残りは環境要因や、面白いことに年齢に影響される。
気温、風、湿度など睡眠に影響する要素を考慮すると、睡眠パターンの違いに特に大きく影響するのが、年齢だったとサムソン博士は言う。

「若いころは夜更かし型になりがちなので、早朝よりも遅い時間に活動ピークが訪れやすい。年を取ると、もっと朝型になる」

おばあさん仮説

年を取るにつれて睡眠パターンが変化するというのは、「おばあさん仮説」と呼ばれるのだと、博士は説明した。
この仮説によると、集団の中に高齢者が一緒に暮らすと、若者が寝ている間に手伝い、全体に目を配ってくれるので、進化上その方が有利なのだということになる。

サムソン博士と研究チームはこれをもとに、「よく眠れないおばあさん仮説」という仮説をまとめた。つまり、高齢者を含めて構成員に年齢の幅のある集団の方が、進化上は生存しやすかったかもしれないというものだ。

ミーアキャットのように集団で暮らす動物は、休息時間には常に見張り番がいる。見張り番仮説と呼ばれるものだ。
トロント大学の研究チームはこの動物行動の仮説を人間にも当てはめて、ハズダ族を観察した。ハズダ族は生活形態が数千年前からほとんど変わっていない。
ハズダ族は約30人ずつの集団で暮らす。狩猟採集民で、獲物の動物や鳥、ハチミツ、ベリー類(小さい果実)、種子などを食べる。
人類学者たちによると、ハズダ族の環境はほとんどすべての人類が一度は経験したものに近いという。

研究チームは、フィットビット(活動記録計)を有志のハズダ族に渡して、睡眠パターンを追跡記録した。成人が約20人いる集団で20日間、昼夜にわたり行動を記録したところ、起きている人が誰もいなかったのはわずか18分だった。

睡眠研究のほとんどは実験室で行われる。それだけにトロント大学のこの研究は、なかなか目新しい内容となっている。

(英語記事 Lark or night owl? Blame your ancestors)

ヘレン・ブリッグス記者、BBCニュース