■浮動株の大半を日銀が買い取り、株価大きくゆがめかねない−関係者

■今週の金融政策決定会合で修正する可能性は低い−関係者

日本銀行が年6兆円規模で行っている指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れの持続可能性について、日銀内から懸念の声が上がっている。
ただ、喫緊の課題ではないとみられており、今週の金融政策決定会合で修正する可能性は低い。日銀の金融政策に詳しい複数の関係者への取材で明らかになった。

懸念が出ているのは、現在のペースでETFの買い入れを続けた場合、個別企業の役員保有株などを除く浮動株の大半を日銀が買い取ってしまい、株価を大きくゆがめかねないためだ。非公開情報のため、複数の関係者は匿名を条件に語った。

複数の関係者によると、ETF購入は2%物価目標の早期実現のため必要な措置との認識から、将来的に見直す場合でも技術的な対応にとどめ、現行の買い入れ額を減らす可能性は低い。
具体的には昨年9月と同様、株価水準が高い一部の銘柄に影響を受けやすい日経平均連動型ETFの買い入れを減らし、TOPIX連動型を増やすことが選択肢の一つとして挙がっている。

日銀はFリテイリのほぼ全ての浮動株を20年までに保有 日銀が保有する浮動株の割合の予想
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金融庁幹部によると、同庁は株主に企業統治の上で多くの役割を果たすように求めており、日銀が物言わぬ株主として市場で存在感を高めている現状を関心を持ってみている。
複数の関係者によると、日銀内にも金融庁の懸念に同調する向きがある一方で、信託銀行が買い入れを受託する現行のやり方でも、企業統治への監視はある程度可能との指摘もある。

日銀内でETF購入の持続可能性を問題視する関係者の間でも、緊急に見直しは必要ないとみられており、19、20両日の決定会合で詳細を議論する可能性は低い。
当面は昨年9月の措置で十分で、さらなる対応は不要との見方もある。ブルームバーグが7ー12日にエコノミスト43人を対象に実施した調査では、全員が金融政策運営方針の現状維持を予想した。

日銀の大規模な長期国債の購入やマイナス金利、長短金利操作など異次元の金融緩和政策に対し、持続可能性やコストについて問題視する声がある。
2%の物価目標の達成が遠のく中、日銀は現行の政策のコストやいずれ来る出口について丁寧な説明を求める意見も出ている。

日経からTOPIXへ

日銀の16年度決算によると、保有するETFの時価は15.9兆円(今年3月末時点)と、東証1部の時価総額約600兆円の3%弱を占める。

ニッセイ基礎研究所の試算によると、日銀が現在のペースで日経平均型ETFを買い続けた場合、ファーストリテイリングの浮動株のうち日銀の保有は来年3月に7割を超え、2020年3月末にはほぼ100%を買い尽くすことになる。
同社が日経平均に占める構成比率は6.9%と最大だが、浮動株は25%と少なく、今年3月時点で日銀の実質保有はその6割を占める。

ニッセイ基礎研の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「試算ではファストリ、アドバンテスト、ユニー・ファミリーマートHDなど一部の銘柄はすでに割高になっている」ことから、浮動株比率が高くなく、日経平均構成比が大きな銘柄の需給がゆがみがちだという。
その上で「TOPIXは浮動株ベースの時価総額でウエートが決まっており、その相似形で株を買えばどの銘柄も市場流通量にあった買い方になる」とし、日経平均型をやめてTOPIX型に変えればこの問題のかなりの部分が解消するとしている。

>>2以降に続く

配信 2017年7月18日 09:30 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-18/OT0LGB6JIJUV01