信州大学の国際ファイバー工学研究所(長野県上田市)と繊維学部(同)などは28日、電気自動車や携帯電話などに使われるリチウムイオン電池のセパレーターについて、薄さや耐熱性を高める新技術を開発したと発表した。

 極細繊維「ナノファイバー」不織布を使っており、量産できる技術としては世界初という。

 セパレーターはリチウムイオン電池のプラスとマイナスの電極を遮断し、発火を防ぐための膜。薄いほど良いが、充電容量が増えるとショートが起きた時に発火の危険性が高まるので、耐熱性を上げる必要がある。

 ナノファイバー不織布は薄いが、これまでは強度不足が指摘されていた。新技術ではペットボトルなどの原料となる合成樹脂「ポリエチレンテレフタレート(PET)」を重ねることで強度を補った。

 また従来のフィルム製に比べ、耐熱温度は130〜150度から200度まで向上したが、製造コストはほとんど変わらないという。PET素材の加工には、静岡県の製紙会社が和紙の紙すき技術を使って協力するなど、開発は産学連携で行われた。

 同日記者会見した同研究所の金翼水キムイクス准教授は、「新技術を使えば、より長く走る電気自動車や、より薄い携帯電話をつくることができる。実用化に向け、協力してくれる日本企業を探したい」と話していた。
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