政治と経済の混乱が続く南米ベネズエラで反政府デモが激しさを増している。新憲法の制定を掲げるマドゥロ大統領が、内容を立案する制憲議会の議員選挙を30日に強行しようとしているためだ。野党が「違憲」と批判するなか、選挙は与党だけで行われる見通しで、新憲法が大統領に強大な権限を与えかねないとして懸念が高まっている。

 「逃げろ!」。28日、首都カラカス。治安部隊が催涙弾を次々と発射すると、デモ隊がちりぢりに走り始めた。周囲に立ちこめたガスで、目がひりひりと痛み呼吸が苦しくなる。デモ隊は路地にバリケードを築き、火炎瓶や、鉄パイプを使った手製の「銃」で反撃。ただ、装甲車やゴム弾を備えた治安部隊にはかなわず、けがをした数人がその場で拘束された。

 「治安部隊は至近距離から撃ってくる。息子は撃たれて命を落とした」。デモに参加したスヘマル・アルマスさん(35)は怒りを隠さない。17歳だった長男ネオマルさんは6月、近くから発射された催涙弾が胸を直撃し死亡した。「デモに参加した市民が殺されている。政府は人殺しだ」

 4月以降、全土に広がった反政府デモの混乱による死者は110人を超えた。治安部隊が制圧を強めるなか、けが人は約2千人に達しており、逮捕者は4千人以上とされる。

 建物の壁や塀には「制憲議会選挙には行かない」「独裁は許さない」と書かれた殴り書きが目に付く。

 マドゥロ氏が突如、新憲法制定…

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