ヤマト運輸は3日、物資輸送における水上バス活用に向け、東京都ならびに東京都公園協会と共同で実証実験を行うと発表した。
東京を訪れた観光客の荷物を預かり目的地まで運ぶ、という想定のもと、旅客運航している水上バスで模擬貨物を輸送する。

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実験に用いられるのは、東京水辺ラインとして東京港や隅田川、荒川でクルーズを運航している水上バス。東京都が所有する防災船でもある。普段は浅草やお台場などを巡っているが、そのルート上で「客貨混載」の実証実験を行う。
水上バスに荷物と利用客が同乗している状態で、搬入や搬出における所要時間、船内での安全確保も含めて必要な人員とその配置、利用客への影響などを調べる。実験結果から、実現の可能性を検証する予定だ。実施期間は10日から31日まで。

ヤマトは手ぶらで日本各地を観光できるよう、観光客の荷物を預かりホテルや空港へ配送するサービスや、モーダルシフトを推進している。
モーダルシフトはCO2削減や交通渋滞緩和のため、トラックから鉄道、船を活用した輸送体制への転換を図る取り組みだ。

そのような活動をより効率的で充実したものにしたいヤマトと、災害時、帰宅が困難な人々のみならず医療器材や救援物資の輸送もスムーズに行いたいという東京都と公園協会の方向性が合致し、今回の実験実施が決まった。

日本では、水上バスはあまり活用されていない。だが、上でも触れたように、メリットはいくつもある。自動車による交通渋滞は減少し、自動車から排出されるCO2の量も少なくなる。
また大規模災害が起きたときは、陸上の代替輸送手段ともなる。実際、阪神・淡路大震災の折、海上での活動が必要物資の輸送に貢献したという。

現在、乗り場や水上での航路、交通網の未整備、事業としての利益の不透明性といったネガティブな面があってか普及は進んでいない。
ただ、今回の水上バス実験が、新たな輸送手段の先駆けとなる可能性はある。(小椋恒示)

実験の実施ルートと実験用のコンテナ(写真: ヤマト運輸の発表資料より)
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配信
財経新聞
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