プロ野球・北海道日本ハムファイターズが2023年にも予定する新球場への移転を巡り、現本拠地の札幌ドームが赤字に転落する可能性が懸念されている。ドームの運営は現在、黒字を維持しているが、売上高の3割以上は日本ハムの試合やイベント関連で、「ドル箱」が抜けた後の赤字転落の回避が課題となりそうだ。【野原寛史】

 ◇高い依存度

ドームを本拠地としているプロチームは日本ハムとサッカーJ1・北海道コンサドーレ札幌。01年の開業以来、大型ビジョンを更新した14年度以外は経常黒字を続けている。17年3月期決算によると、売上高は過去最高の41億4300万円で、経常利益は2億8700万円、最終(当期)利益は1億6500万円。02年サッカー・ワールドカップ日韓共催大会の国内10会場の一つにもなったが、唯一安定した黒字経営を続けている。
札幌ドーム総務部によると、売上高のうち日本ハムが試合やイベントに伴い支払う使用料の割合について、「全体の約3割程度」と説明する。

ただこの中には、飲食や物販など商業事業(売上高11億4900万円)、駐車場料金や「日本ハム移転後、年々増えている」という球場内広告収入などその他事業(同12億1300万円)は含まれていない。ドーム年間総入場者312万人(16年度)の約7割は日本ハムの試合やイベントの観客で、実際の日本ハムへの依存割合は「3割」より大きくなる。
このため、ドーム経営に与える日本ハム移転の影響は大きいとして、札幌市は移転の経営への影響を試算中で、秋までには結果が出る見込みだ。

 ◇穴埋め模索

ドーム側も日本ハム移転の穴埋めについて検討を始めた。16年はイベントを開催できた134日間のうち、日本ハムの試合で78日間を使用しており、秋元克広・札幌市長は毎日新聞の取材に「空白を埋める努力をしたい。イベントやサッカーのニーズはある」と話した。
ただ、既にコンサドーレがドームを本拠地としており、サッカーでは数試合の上積みが限度となりそうだ。

プロ野球では「保護地域制度」により、日本ハムに道内全ての試合の開催決定権があるため、興行的に新球場と競合するドームでの他球団の試合開催が許可される可能性は低いとみられる。
ドーム側は、昨年19日間の開催実績があるコンサートや球団以外のイベントに期待する。ドームの規模に見合った動員を見込めるアーティストやイベントは限られるが、「問い合わせは多くある」としている。ただ、イベントの誘致もドームと新球場は競合する。

 ◇改修費捻出に影

ドームはこれまで、利益を座席改修やトイレ増設などに投資してきた。来年以降も階段の手すり増設やサッカーの天然芝更新、人工芝更新などが控え、14年から23年までの10年間の改修計画は、100億円規模に上る。
仮に日本ハムの本拠地移転で経営が悪化すれば、老朽化が進むドームの維持・改修費の捻出にも黄信号がともる。

配信 8/8(火) 8:22配信
毎日新聞
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