「ひっちゃえる」「さでこくる」「あゆる」……。熊本県天草地方には、「落ちる」を意味する方言が40以上あるらしい。この例にとどまらず、天草の言葉は実に多様性に富む。同県天草市本町の鶴田功さん(76)は約60年間、各地で出あったことばを「収集」してきた。その数、5万語以上。言語学者からも注目を集めている。

きっかけは、高校入学直後の1956年、天草の各地域から集まった同級生が話す言葉に驚いたことだった。「きゃーこくる」「ちゃいくる」「つっぱる」。いずれも「落ちる」を意味する方言だ。「こりゃ、面白か」と方言専用の雑記帳をつくり書きとめ始めた。

高校卒業後は、地元の書店や洋服店に勤め、天草全域を仕事で回るようになった。出向いた先々で新しい方言に出会うたび、その意味を聞いた。手元にノートがない時は飲食店の箸袋に書きとめ、記録する語彙(ごい)の数は増えていった。

旧天草町の高浜地区では「食べる」を「ぱぴぷぺぽ」で活用する、なんとも不思議な方言を聞いた。「ぱん(食べない)」、「ぷー(食べる)」「ぺー(食べろ)」といった具合だ。「飯(めし)ゃぱんパンなろぷー(ご飯は食べない。パンなら食べる)」。

「こんこらー、あんつれんとん、とんとつれんとん」。まるでフランス語のように響くこの言い回しは、釣り仲間同士の会話で拾った。「近ごろは、あの種の魚が一向に釣れないなぁ」という意味だという。


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