世界的な環境規制の強化で電気自動車(EV)の本格的な普及が見込まれるなか、EVの普及を主導してきた日産自動車が異例の方針を打ち出した。
EVの心臓部でもあるバッテリー事業を、中国系ファンドに売却することを決定したのだ。
そこには日産会長であるカルロス・ゴーン氏流のしたたかな読みが見え隠れする。

「(バッテリー事業の売却は)日産にとってEVの競争力のさらなる強化にもつながる。
日産は市場をリードするEVの開発と生産に専念することができる」(日産・西川廣人社長)

日産が保有するバッテリー事業とバッテリー生産拠点を、中国系ファンドであるGSRキャピタルに売却することを決定した。
業界では、この決定を不思議がる声が相次いでいる。

量産型のEV専用車「リーフ」を世界で初めて市場投入した日産は、搭載するリチウムイオン電池の開発・生産体制を整えるため、NECと車載用電池の合弁会社オートモーティブエナジーサプライ(AESC)を2007年に設立した。
出資比率は日産が51%、NECが49%で、AESCが製造するリチウムイオン電池がリーフなどに搭載されている。

日産は9月にリーフをフルモデルチェンジする予定で、デザインを一新するほか、EV普及のネックでもある1回フル充電当たりの航続距離を伸ばして使い勝手を向上、販売を促進する方針だ。
新型リーフにもAESC製のリチウムイオン電池が搭載される見通しだ。

日産では早くからEVを環境戦略車の本命と見て開発を強化、EV専用モデルとなるリーフを10年にグローバルで市場投入。
ルノーとの合計で16年度までにEVを累計150万台販売する計画だったが、実績では40万台超にとどまっている。

EV普及のネックとなっているのが価格と航続距離だ。
特に1回充電当たりの航続距離が、エアコンをオンにすると100km前後と短いことや、世界的には充電設備が整っていないことが大きい。

そして、この航続距離を伸ばすためのキーとなるのが車載用電池だ。
リーフが15年末のマイナーチェンジで航続距離を228kmから280kmに伸ばしたのも、サイズアップを抑えながらリチウムイオン電池の容量を増やしたからだ。
つまりEVの販売を増やすためには、航続距離の延長が必要で、それを左右するのが車載用電池だ。

一方、都市部での環境汚染が深刻化していることや、フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車の不正事件の影響もあって環境規制が強化されている。
英国、フランスは40年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出した。

カリフォルニア州など米国の10州では、自動車メーカーに一定台数以上、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの環境対応車の販売を義務付ける。
中国やインドなどでも、自動車メーカーに電動車の販売を義務付ける政策が導入される見通しだ。

■ EVシフト

これらの動きから、世界の自動車各社はEVの開発を本格化している。
VWは25年までに新型EVを30車種以上投入して新車販売の25%をEVにする計画を掲げる。

ダイムラーは22年までにEVを10車種以上投入、同じく25年までにEVの販売比率を25%にする計画を打ち出している。
大手自動車メーカーのなかで最もEVに否定的だったトヨタ自動車でさえ、16年末からEVの開発に乗り出さざるを得ないほど。

EVシフトは鮮明で、EVに早くから注力してきた日産にとっては追い風となるはずだ。
にもかかわらず、EVの航続距離を左右する重要なデバイスである車載用電池事業を売却するのはなぜか。

ある自動車メーカーの役員は「リチウムイオン電池技術に関して、日産がNECを見限ったからでは」と指摘する。
日産はNECが保有するAESCの株式49%を取得した後、GSRにAESCの株式100%を売却する。

また、NECはリチウムイオン電池と正極材を開発・製造する子会社のNECエナジーデバイスをGSRに売却する方向で交渉しており、車載用リチウムイオン電池事業からは事実上、撤退する。
日産は、NECの電池関連技術を活用して競争力の高い車載用電池を開発・生産することを目論んでいたが、「東芝やパナソニックなどのほうがリチウムイオン電池に関しての技術が進んでおり、あてが外れた」(同)というわけだ。

★1:2017/08/29(火) 00:06:31.86
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※続きます