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[中東の米軍施設 28日 ロイター] - 米空軍のジェレミー・レンケン中佐は、次に何が起きたとしても、シリア内戦をエスカレートするかもしれないことを知っていた。

4人の子どもの父親である40歳のレンケン中佐は、F15E戦闘機「ストライクイーグル」に搭乗し、地上の米軍が支援する部隊とその顧問らを殺害しようとしたイラン製ドローンの周りを「レーストラック」パターンで飛行していた。

ドローンは最初に放った一撃が不発に終わった後、再び攻撃態勢をとろうとしていた。

6月8日、レンケン中佐は、この日までの米軍によるシリア空中戦において前例のなかった行動に出た。遠くからロシアの戦闘機2機が偵察するなか、ドローンを撃墜したのだ。

「ドローンが友軍に狙いを定めるのを目にして、誰かの許可を待っていることなどできなかった。われわれはそれを破壊した」と、レンケン中佐はこの出来事について初めてインタビューに答え、こう語った。

レンケン中佐によるイラン製ドローン「シャヒード129」撃墜は、6月に数週間にわたり、米軍が防衛のために実施した一連の空対空撃墜行動の口火となった。当初、シリアにおける空中戦が急激に悪化する転換点を示すものと思われた。

だが、レンケン中佐と他の米軍パイロットらが6月にドローン2機とシリアの有人戦闘機1機を攻撃する決断を下して以降、シリアを支持する勢力から同様な挑発行動は見られない。米当局者はメッセージが伝わったようだと話す。

レンケン中佐のケースは、多くの点において、シリア内戦のリスクだけを示しているわけではない。同内戦では、ロシア、シリア、米国、そして米国の同盟諸国が、互いの照準範囲内で戦闘機を飛ばしている。

今回の出来事はまた、生死を分けるとともに、内戦に広範囲かつ戦略的な影響を及ぼす決断を瞬時に行わなければならない米軍パイロットの責任の重さも浮き彫りにした。

レンケン中佐は中東にある米軍施設からロイターの取材に応じたが、同施設がある国の要請により、場所は明らかにしていない。

<敵意>

飛行中隊長であるレンケン中佐は、国際武装組織アルカイダによる2001年9月11日の米同時多発攻撃の余波の中で、空軍のキャリアを積んできた。世界貿易センターに航空機をハイジャックした自爆犯が突っ込んだとき、パイロットの訓練を受けていた。以来、中東に幾度となく派遣されている。

そんなレンケン中佐が、シリアの空中戦はユニークだと認めている。

アフガニスタンやイラク、シリアにおける武装勢力との戦いにおいて制空権を享受していた米軍パイロットは、シリアでは、高性能なロシアやシリアの戦闘機、または地上防空システムによってもたらされるリスクを楽観できなくなった。

シリア、ロシア、米国やその有志連合の戦闘機は全て、互いの武器から「逃れられない」射程距離内を飛行している。

「われわれは全面的に交戦可能だ。したがって、『あれはエスカレーションだったか』と判断するには、大変な自制と、状況の微妙な違いの観察を要する」とレンケン中佐は語った。

米国とロシアがそれぞれ支援する地上部隊が、われ先にと残された過激派組織「イスラム国」の支配地域を手に入れようとするなか、地上でも空中でも双方が偶発的に接触する危険性が高まっている。

米軍は、地上戦ではイスラム国の戦闘員にいつどのように対応すべきかを何年もかけて習得してきたが、米軍パイロットはいまだにシリア上空で他の戦闘機の敵意を判別する経験を積んでいる最中だ。
>>2以降に続きあり)

(Phil Stewart記者 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

2017年 9月 3日 8:00 AM JST