https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170909-00010000-yomonline-life&;p=1

国や自治体が子育てに「祖父母」を活用する取り組みを広げようとしている。
しかし、高齢者にとって孫の育児は体力的にきつく、出費も増えるほか、
自由な時間を奪われるなどの負担もあり、最近では、「孫疲れ」という言葉も
生まれている。孫の育児経験もある、家族問題評論家の宮本まき子さんは、
当事者間のルール作りなど、祖父母の負担を減らす方法を提案する。

「孫育」に疲れる高齢者

第一生命経済研究所が孫のいる55〜74歳の男女1000人を対象に行った調査
(2015年7月公表)によると、子どもやその夫・妻に頼まれて孫の面倒をみた
経験のある人は66.4%で、同居や30分以内の距離に住むケースに限れば
80%を超えた。しかし、元気に駆けずり回る孫と付き合うのは大変だ。

最近の高齢者は見た目が若く、活動的な人が多いため、子どもたちに体力や
気力が有り余っていると勘違いされやすい。あてにされて「フルタイム」で孫の
世話をすることになる祖父母たちは、実は子どもたちの晩婚・晩産化のせいで
前の世代より10年以上遅く孫の育児を始めることになる。体力・気力は簡単には
続かない。「健康寿命が残り少ないのに行動を制限される」といった欲求不満から、
心がうつうつとネガティブになる人もいる。「孫疲れ」などという言葉も生まれている。

あてにされる老後資金

現在の祖父母世代は質素な暮らしに慣れていて、貯金を浪費せず、年金を受給しつつ、
リタイア後も稼ぐ人が珍しくない。だから財布も何かとアテにされるようだ。
電通が2012年に行った調査によると、孫のための年間支出額は平均で約11万円。
孫が1人だと8万8522円、孫が3人になると12万8964円となっている。

孫の行事や家族イベントの出費も祖父母頼みが多数派だ。七五三の祝い、
入園・入学祝い、誕生日祝い、お年玉……と6人の孫に平等に渡していたら、
年間で100万円の「孫出費」になってしまい、打ち切りたくて難儀しているという話も聞く。

資産に余裕があって好んで出費している人はいいだろうが、2016年の「高齢社会白書」に
よると、65歳以上の高齢者世帯の平均年間所得は300万5000円で全世帯平均の半分強。
祖父母世代の多くは、孫への出費で実は大変な思いをしているのである。

◇老後の時間を奪われる

戦後間もない頃まで、日本では「息子や嫁は外で稼ぎ、祖父母が家事・育児をする」
というライフスタイルが珍しくなかった。しかし、高度成長とともにアメリカ式の
「親が主体になる子育て」が推奨され、社会に定着した。その担い手は主に女性に
任せられていた。今の祖父母世代はアメリカ式の子育ての第一世代で、自分のやりたい
ことは後回しにして、仕事や育児に奮闘した人たちなのである。子どもを独立させ、
仕事からリタイアしてようやく得た「自分のための自由時間、自由なお金」を、今度は
「孫育て」に奪われようとしているのだ。