日本に帰化したカンボジア人らが参拝する施設が神奈川県伊勢原市善波の山中に完成した。

 2日には開山式(開所式)があり、駐日大使やカンボジア本国の高僧、財界人を含む約200人が出席し、カンボジア人の心のよりどころの完成を祝った。

 寺院を中心としたコミュニティー施設で、敷地は約7500平方メートル。中庭には本国から運んだ黄金の5体の仏像が安置された。榊克幸さん(34)は、「ようやくここまでたどり着きました。今まで気軽にお参りできるお寺が日本にありませんでしたから」と感慨深げに語った。

 榊さんの両親は、ポル・ポト政権から逃れて難民となった。移り住んだ日本で榊さんは生まれ、16歳で帰化した。相模原市で育ち、現在は同市にある外国人技能実習生を受け入れる会社の代表を務めている。

 「姓の榊は母が決めました。榊は神様の葉っぱ。難民となった私たちは海に浮かぶ葉っぱのようだからです」と苦笑する。下の名はお気に入りの日本の漫画の登場人物にちなんで付けられた。

 センター長となる在日カンボジアコミュニティ(大和市)の副理事長の楠木立成さん(57)も18年前に帰化した。「カンボジア人の98%は敬虔けいけんな仏教徒。しかし、借りた建物はどこも狭く、満足できなかった。初めて自分たちのお寺を持つことができた」と同様に喜ぶ。

 悲願だった寺院建設が実現したのは、ネックだった資金面が解決したからだった。本国の財閥の夫人のシーンチャンヘンさん(54)が約7340万円を提供した。

 その夫人も駆け付けて、「ここは緑に囲まれた静かなところ。娯楽や文化面でもカンボジア人が楽しく過ごせる場所になってほしい」とあいさつした。

 榊さんは「ここからカンボジアの情報を発信したい。そのためにもこの施設を早く認知してもらいたいです」と力強く語った。(中村良平)

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