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2017年9月18日 16:19 発信地:バングラデシュ

【9月18日 時事通信社】1980年代のエチオピア大飢饉(ききん)のように1カ国が巨大な飢えに見舞われるのではなく、世界各地で今年、飢餓が同時多発する危険に直面している。来日した世界食糧計画(WFP)のロペスダシルバ事務局次長が警告した。

 南スーダン、ナイジェリア、ソマリア、イエメン。西アフリカからアラビア半島へ点在する4カ国をWFPは今年「飢饉寸前」という共通項でくくっている。並行してミャンマー軍に追われたイスラム系少数民族ロヒンギャ難民が流入するバングラデシュでも緊急支援が必要だ。

 南スーダンについては2月、WFPは一部で「飢饉が起きている」と最も強い警告を世界に発した。雨期でぬかるむ道、増水したナイル川、空輸と、あらゆるルートで緊急支援を投入、餓死発生を食い止め、6月には最悪の状態を脱したが「状況は不安定で、昨年の今ごろ150万人だった南スーダンの支援対象者は今年8月、290万人と倍増した。状況の悪化が分かる」と事務局次長は指摘した。

 原因は、自衛隊施設部隊も撤収に追い込んだ武装勢力と政府軍の戦闘だ。「家畜はもちろん畑に植える種さえ失っている」。避難民に暮らしを再建する力がない。「エチオピアやケニア、スーダンに加え、ここ数カ月、ウガンダにも100万人が逃げている」と国外への危機拡大を警告する。

 ソマリアは南部、ナイジェリアは北東部を中心にそれぞれアルシャバーブ、ボコ・ハラムというイスラム過激派が支配地を維持する。支援を届けられるのは軍が奪回した地域に限られるが「自爆テロの危険が常にある」。最近のイスラム過激派は軍と支援団体を区別しない。

 イランが支えるイスラム教シーア派系武装組織フーシ派と、サウジアラビアが支えるハディ大統領派が争う内戦下のイエメンは支配地域が入り組み「支援を届けようにも、どこも封鎖だらけ」で頭が痛い。「人道支援は封鎖の対象外なのに、輸送を頼んだ民間企業の船が港で荷揚げを止められる」など遅延に次ぐ遅延で、食料を待つ人々の飢えは悪化していく。

 紛争に伴い飢餓が心配される国は他にもある。事務局次長は中央アフリカとコンゴ(旧ザイール)の両国を挙げた。コンゴでは2月、調査のため現地入りした国連職員さえ殺害されている。

 さらに戦闘で疲弊した地域に日照りなど異常気象が追い打ちをかける。特に「ソマリアの日照りはもう3年連続」と過酷だ。ただ、似たような状況のケニア北部やエチオピア南東部は「政府が機能して自分たちで対策を考え、WFPはそれを助けるだけで済んでいる」。紛争下にある国とない国。隣り合いながら対照的だ。(c)時事通信社