9月25日 11時33分

和歌山県田辺市で活動した世界的な博物学者・南方熊楠が、生物学に造詣の深い昭和天皇が地元を訪問することへの期待などを記した手紙が、千葉県我孫子市にある展示施設の調査で確認されました。
南方熊楠は、明治時代後期から現在の和歌山県田辺市を拠点として活動した世界的な博物学者で、粘菌学や民俗学など多岐にわたる分野の研究で業績を残しました。

手紙は、同じ和歌山県出身のジャーナリスト、杉村楚人冠に宛てて昭和4年5月に出したもので、千葉県我孫子市の展示施設「杉村楚人冠記念館」が、楚人冠の遺族から寄託された資料の中から見つけ、筆跡や内容などから熊楠のものだと確認しました。

この中で熊楠は、田辺湾に浮かぶ神島に残された貴重な自然について記したうえで、生物の研究に熱心だった昭和天皇が神島を訪問し「粘菌を採取されることを強く願っている」としたためています。

当時、熊楠には天皇に講義を行うことが打診されていましたが、神島への案内は決まっておらず、この手紙では、「立ち寄られることをただ祈るだけだ」としています。

実際には、1か月後に天皇の神島訪問が実現し、熊楠はみずから集めた標本を献上しています。熊楠に詳しい南方熊楠顕彰会の田村義也さんは、「天皇を迎えたいという意気込みや期待感が表れた重要な資料だ」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170925/k10011155081000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_001