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◆麻酔医の習熟必要

 日本産婦人科医会の調査によると、分娩全体に占める無痛分娩の割合は二〇一六年度が6・1%。国が〇八年に調査した〇七年の2・6%から急増。ニーズは確実に高まっている。

 心臓に持病があるなど出産にリスクがある女性の場合、無痛分娩を選択できれば帝王切開を避けられる可能性が出てくる。妊婦の負担を軽減できるのは大きなメリットで、「痛みや極度の疲労を避けられるなら、二人目を産んでもいいと考える人もいるはず」と田辺さんは話す。田辺さん自身、第二子の出産では無痛分娩を選択した。

 今は病院で行うすべての無痛分娩に携わる田辺さんだが、「こつをつかむのに苦労した」という。お産の進み方や痛みの感じ方は人それぞれ。無痛分娩の麻酔は投与が長時間にわたるほか、薬の量や種類を調整するなどの技術が必要になる。この技術に習熟した専門の医師は少なく、「体制が整わないまま、なし崩し的に広まったことが重大な事故につながったのでは」とみている。

 無痛分娩を考えている妊婦は、お産する場所をどう選べばいいのか。「病院の体制を必ず確認すること。医師が複数いて、可能なら麻酔科医が麻酔を担当しているところがいい」。帝王切開や器械分娩となった件数や合併症などのリスクについて尋ね、しっかり説明できるかどうかもチェック。計画分娩か自然の陣痛に対応するかも確認し、持病やアレルギーがある場合は申告する。「利益とリスクをよく考えて選択を」と助言している。

<無痛分娩> 脊髄と背骨の隙間に背中側から細い管を挿入し、局所麻酔薬と医療用麻薬を継続的に注入する「硬膜外麻酔」が一般的。お産の痛みを伝える脊髄に近いため、強い鎮痛効果がある。疲労が少なく産後の回復が早いとされる一方、頭痛や尿が出にくくなるといった副作用や、鉗子(かんし)・吸引分娩が増えるなどリスクも。保険適用外で10万円前後の追加費用がかかる。