富士山に登った人のおよそ3人に1人が高山病を発症していたことが、山梨県富士山科学研究所主任研究員の宇野忠さん(45)の調査でわかった。
 宇野さんは、水分を取ったり暖かい服を着たりすることで、高山病の発症を防ぎ、発症した場合でも症状を和らげることができると話している。

 高山病は、標高2500メートル以上で発症しやすく、頭痛や吐き気などが起きる症状。高い山は酸素が薄いため、体内に取り込める酸素量が減り、血液中の酸素が不足状態となる。ただ、発症するメカニズムは詳しく解明されておらず、宇野さんは「酸素が薄いことに加えて、脱水症状や寒さを感じることが高山病を発症させている可能性がある」と話す。

 宇野さんは2015年と16年の8月、富士山5合目付近で、下山者計1399人に、年齢や体調、喉の渇きや寒けを感じているかどうかなどを尋ねるアンケート調査を行った。

 調査によると、頭痛やめまい、吐き気など高山病の症状があったのは467人で、登山者全体の33・4%に上った。発症率は、ヨーロッパのアルプスで行われた調査結果と同程度だった。年齢と発症率に関係はなかった。発症者のおよそ65%は、富士山に登るのが初めてだった。

 「喉が潤っている」と感じる状態を「0」、「渇いている」と感じる状態を「100」とした場合、高山病を発症した登山者の平均は48・67で、非発症者の41・08より高く、喉が渇いている状態だった。また、高山病を発症した登山者は、頂上にいた時に、非発症者よりも寒さを感じていた。

 酸素が薄い高山では呼吸の回数が増えるため、体内から水分が出ていく。さらに、宇野さんは、「登山者はトイレに行かないようにしようと水分を控える傾向があるため、脱水状態に陥って高山病を発症しやすい」と指摘。また、防寒対策が不十分な登山者も多く、体温が低下することも高山病の一因になっていると分析している。

 宇野さんは「高山病は体調を悪化させ、遭難やけがの原因にもなる。高山病の発症を抑え、発症しても症状を和らげることができるため、登山中には水分を取ったり暖かい服を着たりしてほしい」と呼びかけている。(藤原聖大)
http://yomiuri.co.jp/science/20170927-OYT1T50123.html