http://jp.reuters.com/article/banks-credit-breakingviews-idJPKBN1CB0ZG

Edward Hadas

[ロンドン 4日 ロイター Breakingviews] - 2008年に迎えた最悪の状態から約10年が経過した今、各国中央銀行当局者は、ようやく金融危機がほぼ終焉(しゅうえん)を迎えたと考えられるようになった。だが、正念場はここからだ。

金融当局は、金融システムをどうにかこうにか維持してきた。これは良いニュースだ。

では悪いニュースは何か。回復のために彼らがとってきた政策には、そもそもシステムを崩壊寸前に至らせた従来の慣行と不健全なまでに類似した点がある、ということだ。

金融政策には複雑な要素がたくさんあるが、危機後の基本的なアプローチは、かなりシンプルなものだった。政策金利を低く抑え、債券市場に資金を投入し、政府債務についてはあまり心配しすぎず、あとは運を天に任せる、というものだ。

主要先進国はいずれも、2009年以降、ゼロ金利あるいはマイナス金利を続けている。「量的緩和」という気取った呼び名のもとで行った債券市場への資金投入により、中央銀行のバランスシートは膨れ上がった。

米連邦準備理事会(FRB)の保有資産残高の対国内総生産(GDP)比は、危機以前の6%から、現在では23%に上昇している。財政健全化がこれほど言われているにもかかわらず、ほとんどの先進国において、危機のあいだに財政赤字が急増し、その後の削減ペースは鈍い。

もっと悪い結果になる可能性もあった。1930年代の大恐慌を特徴づけた危機や銀行倒産による経済へのダメージは、はるかに大きかった。だが、世界金融危機後の景気回復が遅々として不安定であったことを思えば、もっとうまくやれた可能性もあるかもしれない。

景気回復が十分に進んだため、2015年に米国でおずおずと始まった緊縮的な金融政策は、徐々に各国に広がりつつある。FRBは、一時は0.25%まで下がっていた政策金利を1.25%まで引き上げ、つい先日には量的緩和の反転につながる小さな動きをいくつか発表したばかりだ。

イングランド銀行(英中央銀行)と欧州中央銀行(ECB)も引き締めをほのめかす発言をしてきたが、今後数カ月のうちに実際の行動に移す可能性がある。

とはいえ、超緩和的な金融条件から、かつて正常と思われていた状態へと回帰する旅が始まったとはまだ言いがたい。米国債10年物利回りは2.3%で、インフレ率1.9%を依然としてやや上回っている。経験豊富な投資家なら、利回りがインフレ率の約2倍に達するまでは魅力を感じないだろう。

だが10年という時間は、新たな習慣が定着するためには十分に長い。企業、政府、金融機関はみな低金利に慣れてしまった。中毒になっているとも言える。

金利が上昇すれば、銀行としては昔ながらの融資でより大きなマージンを稼ぎやすくなるかもしれないが、そうした利益よりも、新たに窮迫する借り手が生じることによる損失のほうが大きくなってしまう可能性がある。
(リンク先に続きあり)

2017年10月8日 / 03:09 / 13時間前更新