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 鹿児島県特産の「キビナゴ」が記録的な不漁に見舞われている。

例年、全国の漁獲量の約2割を占める甑島(薩摩川内市)周辺海域での漁獲が振るわず、価格も高騰。食卓で親しまれている食材だけに、関係者は「『庶民の味』が失われかねない」と危機感を募らせている。

 県水産技術開発センター(指宿市)によると、今年の県全体の漁獲量は、漁期が終盤に差し掛かった7月末現在、746トンと平年の約8割。主漁期を終えた甑島周辺の水揚げは特に落ち込み、平年の約7割にあたる316トンにとどまった。

 県内の漁獲量は近年、減少傾向にある。2015年には、統計が残る1980年以降で最少の1244トンだった。今年も15年と同水準で推移しているという。冬季の海水温や黒潮の流路の変動が影響しているとみられるが、詳しい原因は分かっていない。

 価格の高騰にも拍車がかかっている。県の統計によると、県内の魚市場での平均単価は、15年に1キロ当たり569円と03年(377円)から約5割上がった。サイズも小ぶりのものが目立つという。鹿児島市西千石町の隈元鮮魚店では、約10年前まで100グラム当たり80円程度で販売していたが、近年は同200〜300円で売ることが増えた。

 同店社長で、鹿児島鮮魚協同組合副理事長の隈元仁さん(71)は「キビナゴは鹿児島では欠かせない食材。ニーズは高いので毎日店頭に置きたいが、仕入れが難しくなっている」と漏らす。

 甑島漁協は休漁日を設けたり、主要な産卵場を禁漁区としたりする自主的な規制を設け、資源管理に努めている。同漁協職員の石原康司さん(45)は「水揚げが減ると加工品の製造が難しくなり、漁協の経営にも大きな痛手。今後も漁業者と協力し、『甑の宝』を守りたい」と話している。(中村直人)

◆キビナゴ 温帯、亜熱帯の沿岸部に生息するニシン科の小型魚。鹿児島、長崎、宮崎県などで漁が盛んで、天ぷらや刺し身、一夜干しなどで食される。脳梗塞(のうこうそく)の予防につながるEPAを豊富に含むなど栄養価も高い。

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