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2017年11月14日 / 06:47 / 9分前更新

[ロサンゼルス 10日 ロイター] - トランプ米大統領が不法移民の取り締まりに乗り出している影響で、米国の農業セクターが人手不足に直面し、ロボット導入など作業自動化を急ピッチで進めている。

業界団体の米農業連合会(AFBF)によると、米国の農業に従事する労働者の最大で7割が正式な登録をしていない。また議会では共和党が、すべての雇用主に対して従業員が合法的に国内に居住していることを確認するための社会保障番号のチェックを義務付ける法案を提出した。

オバマ前政権で農務長官を務めた酪農輸出団体の最高責任者トム・ビルザック氏は、こうしたトランプ政権の強硬姿勢が農業界に「多大な不安を生み出した」と話した。

このためただでさえ高齢化に伴う労働力人口の減少に悩まされている農業セクターは、新技術を受け入れざるを得なくなってきた。

実際に農家や食品企業などは、日常的な酪農作業や鶏肉の加工、農産物の生産および収穫などの自動化に動き出している。酪農家向けの搾乳機を製造するレーリー・ノースアメリカのセールスマネジャー、スティーブ・フライド氏は以前、いかに省力化が図られるかを納得させて販売するのに苦労していたが、今ではひっきりなしの問い合わせを受けて休む暇がないとうれしい悲鳴を上げる。

カリフォルニア州でワイン用のぶどう園を所有するダフ・ベビル氏は「もはや自動化計画を持っていないとすれば愚か者だろう」と言い切った。

鶏肉加工大手ピルグリムズ・プライド(PPC.O)は今年、工場にロボットやX線技術を導入するための投資を実施する主な理由として、移民の労働力が減っていることを挙げた。ウィリアム・ロベット最高経営責任者(CEO)は「処理作業の自動化と省力化、簡素化に向けてわれわれは相当な投資をしつつある」と述べた。

北米でにんにく生産最大手のクリストファー・ランチの幹部の話では、同社も今年約100万ドルを投じて包装工場にスペイン製のロボットを導入する予定だ。

ウィンターグリーン・リサーチが2014年に公表した報告書では、農作業や酪農、食品生産といった分野におけるロボットの使用は今後大きく増える見込みで、農業関連ロボットの市場規模は13年の8億1700万ドルから20年までに163億ドルに拡大するという。

この分野への投資も活発化。アルファベット(GOOGL.O)傘下のグーグル・ベンチャーズは今年、りんご収穫用ロボットを開発している企業への1000万ドルの出資を主導したほか、ロボットを使って葉物野菜を屋内で栽培している企業が実施した2000万ドルの資金調達に参加した。

また農機大手ディア(DE.N)は、農業用ロボット開発のブルーリバー・テクノロジーを3億0500万ドルで買収している。

一方、農業経営者は労働者の賃金も引き上げている。米労働省の最新データによると、4月9─15日の平均時給は13.23ドルで、前年同期比で4%上がった。

北米の農地に投資している不動産投資信託ファームランド・パートナーズ(FPI.N)のポール・ピットマンCEOは、「農業界において今は可能な分野は自動化し、どうしても必要な労働力には相応の報酬を提示しろというのが合言葉になっている」と説明した。

(Lisa Baertlein、P.J. Huffstutter記者)