http://www.zaikei.co.jp/article/20171116/412214.html
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)などによる観測によって、ペルセウス座銀河団中心部の鉄属元素の組成比が、太陽のそれと同じであることが明らかになったという。従来の学説では、高温ガスの元素組成比は太陽の値とは異なると考えられていたため、これは定説を覆す発見であると言える。

すなわち、太陽の元素組成は、現在の宇宙の平均的な化学組成を示すものである、という示唆が与えられたわけだ。

 ペルセウス座銀河団は、ペルセウス座の方向、地球から2億4,000光年のかなたにある。宇宙で最大の天体であるとされ、数千万度の高温ガスや、数百以上の銀河が、その重力に束縛されている。

 この銀河団の高温ガスは、5,000万度ほどの熱を持ち、宇宙誕生から現在までの間に超新星爆発や恒星の活動によって合成された元素を貯め込んだものである。つまり、その化学組成が分かれば、宇宙の平均的な化学組成が分かる、とされている。

 そのため、これまでにもX線天文衛星による観測など精力的な観測が行われてきたが、従来の観測機器では力が足りず、正確な見積もりはできなかった。

 しかし今回、JAXAが中心となって国際的に開発されたX線天文衛星ASTRO-H(ひとみ)搭載の軟X線分光検出器(SXS)による観測によって、前述の如き事実が明らかになったのである。

 より詳しく言えば、その高温ガスに含まれる、ケイ素、硫黄、アルゴン、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケルの元素の比は、すべて太陽と同じであった、ということだ。

 なお、ASTRO-Hは打ち上げから1カ月後に不具合によって機能喪失状態に陥り、現在、代替機の準備が進められているが、その前にお手柄を上げることができたというわけだ。

 研究の詳細は、英国の科学誌Natureのオンライン版に掲載されている。

ペルセウス座銀河団の可視、X線合成画像と、ASTRO-Hにより得られたペルセウス座銀河団中心部のX線スペクトル。青は観測領域、黄色は ASTRO-H以前に得られていたX線スペクトル
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