2017年12月12日 朝刊

 生活保護制度などのあり方を検討している社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)部会は十一日、生活保護を受ける世帯の子どもの大学や専門学校への進学を後押しするため、現行制度の見直しを求める報告書を取りまとめた。子どもが進学した場合、世帯の受給額が減る仕組みが進学率の低さにつながっているとの指摘があるためだ。報告書を踏まえて制度の見直しを決める政府・与党は制度の骨格を維持する方針で、抜本的な改善につながりそうにない。 (編集委員・上坂修子)

 生活保護制度は原則、高校を卒業したら就職する前提で、大学などへの進学を想定していない。進学する場合、同居していてもその子どもは生活保護から外れる「世帯分離」という手続きをし、保護費は打ち切られる。保護世帯の子どもの大学などへの進学率は二〇一六年で33%と、全体の73%の半分以下にとどまる原因とされている。

 報告書は現行制度について「大学等への進学を支援するため、生活保護制度特有の事情が障壁になることがないよう、制度を見直すべきだ」と結論付けた。

 現行制度の骨格といえる世帯分離については両論を併記した。「大学などへの進学が一般化しており、世帯分離を行うべきではない」とする一方、「生活保護世帯以外の低所得世帯の子どもとのバランスを考慮する必要がある」と廃止に慎重な意見も明記した。

 厚労省の試算では、東京二十三区内に母親と子どもが二人で暮らす世帯で、進学を理由に世帯分離した場合、生活費、住宅費などに相当する保護費が月約五万二千円減らされる。報告書では、この減額について進学の障壁になり得るとして、見直しを求めた。

 ただ、制度の骨格を維持する考えの政府・与党は住宅扶助は減額しない代わりに、生活扶助は減らすルールを維持する方針。例えば、厚労省が試算した世帯のケースでは、住宅費の約一万円は減らさないが、残り四万円余の生活費は現行制度の通り減額する。これでは家庭全体の受給額が減るという現行制度の問題は抜本的に解決されたとはいえない。政府・与党は入学時に一時金を支給するなど、新たな支援策を検討するというが、進学率向上への効果は限定的になる。政府は報告を踏まえ、来年の通常国会に生活保護法の改正案を提出する。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201712/CK2017121202000136.html
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