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 フクロウとリンゴ農家、園地でタッグ−。
リンゴの苗木をかじる野生のハタネズミ対策のため、天敵のフクロウの巣箱を園地に設置する取り組みが青森県津軽地方で広がっている。
弘前大学の調査では、フクロウが園地に巣を作る期間は、巣の周辺でハタネズミが減っていることが確認されており、
フクロウの活躍に関係者の期待が高まっている。

 弘大の東信行教授によると、ハタネズミはリンゴ園地や田んぼのあぜに多く生息。植物をエサとし、冬季は園地でリンゴの樹皮を食べる。
園地で普及が進むわい化栽培の若木は幹が細いため、被害が深刻化しやすく枯死することもある。
幹を守るプロテクターのほか、ネズミの忌避剤や殺そ剤があるが、効果は限定的。特に豪雪だと食害が発生しやすいという。

 フクロウは3月ごろ、つがいとなって巣を作り産卵。4月ごろふ化して1カ月ほどで巣立ち、年間を通じて園地や周辺の森を含む
縄張りの中で生息する。一つの巣から平均で3羽ほどのヒナが誕生する。

 以前は古いリンゴの木にできる「ウロ」という樹洞(じゅどう)に巣を作っていたが、木が小ぶりのわい化栽培が広がってウロが減った。
フクロウが園地に生息しづらくなったことから、人の手で巣箱を設置する動きが広がっている。

 リンゴ園地での巣箱設置は弘前市や板柳町、平川市、青森市で行われている。弘大と弘前市の農家らでつくる「下湯口ふくろうの会」は
2014年から、リンゴ木箱より、ひと回り大きい巣箱を園地に設置。
16年、複数の園地で巣箱から半径100メートル以内のネズミの数を調べたところ、ふ化する前の4月に比べて、ふ化後の5月には
約3分の1に減少していた。フクロウが繁殖しなかった園地では、ネズミの減少は1割ほどにとどまった。

 調査に当たった岩手大大学院連合農学研究科(博士課程)=弘大農学生命科学部内=の大学院生ムラノ千恵さん(39)は
「フクロウの巣周辺ではネズミの巣穴が激減するのを実感した。これまで農家が感覚的に体感していたフクロウの効果を実際の数値で実証できた」と話す。

 弘大と同会は17年、昨年より10カ所多い63カ所に巣箱を設置。このうち7カ所で13羽のヒナを確認した。
同会の石岡千景代表(35)は「リンゴ作りのパートナーとして、フクロウと共生していきたい」と信頼を寄せる。
ムラノさんは「園地でのフクロウの生息密度を高め、ネズミの食害の抑制効果を地域全体に広げたい」と意気込んでいる。