■「合憲」NHK受信料、実はまったく不明!?徴収「お願い」困難で「特別センター」出動、最悪「訴訟に」

テレビがあればNHKと受信契約を結ぶ義務がある、とした放送法の規定は「合憲」だと最高裁は12月6日、初の判断を示した。
判決は、受信契約や受信料徴収に、どのような影響を与えるのか。
NHKは大きく変わらない、としているが…。改めて受信料とは何かを考えてみる。

■受信料の規定はどこに?

総務省によれば、受信料の歴史は、1926年にNHKの前身である社団法人日本放送協会が設立されたときから始まった。
当時はラジオの「聴取料」で1円だった。
50年6月に放送法が施行され社団法人は解散、改めて同法に基づいた特殊法人として日本放送協会(NHK)が設立され、放送法第64条の規定による受信料制度が始まった。
64条は次のように規定している。

「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」
今回、最高裁判決が「合憲」と判断した部分だ。
ただ、放送法は受信料が何か、何を使用目的として徴収するか、などは規定していない。
64条に基づく受信契約内容を規定する「日本放送協会放送受信規約」にさえ、その記載はない。

■そんなものは、どこにもない

メディア法に詳しい立教大学の服部孝章名誉教授によると「放送法だけでなく、そもそも受信料が何であるか、その具体的な使用目的が何であるかなどを規定しているものは何もない」という。
つまり、受信料とは何かについては、まったく不明なのだ。
しかし、NHKは、公式サイトの「よくある質問集」で次のように説明している。
「NHKは、受信機をお持ちの方から公平にお支払いいただく受信料を財源とすることにより、国や特定のスポンサーなどの影響にとらわれることなく、公共の福祉のために、みなさまの暮らしに役立つ番組づくりができます」

■都合のいい理屈

この論拠はどこにあるのか。
服部名誉教授によると、放送法施行後、10年以上が過ぎたところで、放送制度全体を見直す機運が高まった。
その結果、64年、郵政相(当時)の諮問機関である「臨時放送関係法制調査会」が受信料に関する答申を出した。
その答申で同会が、受信料を「国家機関ではない独特の法人として設けられたNHKに徴収権が認められたところの、その維持運営のための『受信料』という名の特殊な負担金と解すべき」と定義したのだ。

服部名誉教授は「結局、それ以上議論は煮詰まらず、この答申が今なお中途半端な形で受け入れられている。
受信料は“NHKの維持運営のための活動費”であるという、NHK自身や行政、審議をサボってきた国会に都合のいい形で残っているだけ」と指摘する。
答申を踏まえ、受信料支払いの義務化を盛り込んだ放送法の改正案が、66年の通常国会に提出された。
が、審議未了のまま、廃案となり、今に至っている。

服部名誉教授は、現在の状況を良しとはしない。
「このままでは受信料が法的性格を持たない。
当時、臨時放送関係法制調査会でやったような議論を繰り返し続けていくべきだ」

■受信料の歩み

話を受信料徴収の歴史に戻す。
放送法施行当時は、受信料徴収の対象はラジオのみで月額35円だった。
53年2月にテレビ放送が始まると、ラジオ受信料とテレビ受信料の2本立てに。
それぞれ50円と200円だった。
68年4月にはラジオ受信料が廃止され、代わりに「カラー契約」と「普通契約」の2本立てになった。
84年4月には口座振り替えが始まり、訪問集金などよりも50円割安になる料金が設定された。
1989年8月に衛星契約が導入されると今度は地上契約と衛星契約の2本立てとなり、2度の消費税率引き上げなどによる値上げ、2012年10月の値下げなどを経て、14年4月以降、地上契約1310円、衛星契約2280円となっている。

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