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2017年12月30日 19:21 発信地:中国
【12月30日 時事通信社】中国がスリランカやパキスタンなど南アジア諸国への浸透を進めている。スリランカでは、国内有数の規模を誇る港を中国国営企業が99年間借り受ける契約が締結された。中東から日本に向けて輸出される原油や液化天然ガスのほとんどが通過する重要なシーレーン(海上交通路)を抱える地域で、中国は存在感を際立たせている。

 中国は、シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げて南アジアへ進出。港湾や鉄道、発電所など重要インフラの整備を支援している。

 ◇軍事拠点化を懸念

 スリランカは今年7月、南部ハンバントタ港を中国国営企業に11億ドル(約1200億円)で99年間貸し出す契約を結んだ。港は親中派のラジャパクサ前政権が建設したが、約13億ドル(約1500億円)とされる建設費の大半は中国からの融資だ。

 ただ、財政が苦しいスリランカは「悪夢のような返済」(地元紙デーリー・ミラー)のめどを立てられず、その代替措置として港を貸し出したとみられる。

 パキスタンでは、中国西部の新疆ウイグル自治区からインド洋に面するパキスタン南西部のグワダル港に至る「中パ経済回廊」の建設が進む。グワダルで港湾整備に携わってきた中国は2015年、パキスタン側と港の43年間の租借で合意した。

 パキスタンは人口増加に伴う電力不足に悩まされ、財政難で道路などのインフラ整備も難航。中国の支援は渡りに船だ。

 中国がインド洋一帯で進める港湾整備は、「南アジアの盟主」を自任してきたインドを包囲するような形で行われている。長期にわたって租借される港が軍事拠点化されるのではないかとの懸念もあり、インドは警戒を募らせている。

 ◇対米悪化に乗じ接近も

 パキスタンは最近、テロ対策をめぐって対米関係がぎくしゃくしており、中国はこれに乗じてパキスタンとの接近を図ってきた。トランプ米大統領が8月下旬の演説で、パキスタンを「テロリストを保護している」と名指しで批判すると、中国は直後に「パキスタンは平和と安定のため重要な貢献をしてきた」(華春瑩・外務省副報道局長)と持ち上げてみせた。

 アジア太平洋地域の諸問題を扱うオンライン誌ディプロマットは「米国は中国とパキスタンの関係を弱めようとしてきたが、(トランプ演説を機に)かえって関係が深まった」と指摘した。

 中国とインドに挟まれたネパールでは11、12両月に実施された下院選で、親中派とされる共産系の左派同盟が大勝した。親中派の新首相候補は、選挙戦で中国による水力発電所計画の受け入れを示唆。ここにも中国の影がちらつく。(c)時事通信社