■20年前と変わらず

 部活動の完全外部化(地域移行)については、じつは1996年4月〜7月にかけて文部科学省(当時は文部省)が実施した全国調査「中学生・高校生のスポーツ活動に関する調査」(『運動部活動の在り方に関する調査研究報告書』(1997年))のなかにも同じような質問を見つけることができる。

 「運動部活動を将来どのようにしていくのがよいと思うか」という質問に対して、中学校教員では、学校部活動を基盤とすべき旨の回答が計46.4%であったのに対して、地域移行を目指すべき旨の回答が計53.6%であった[注1]。

 約20年前においても、部活動の地域移行は職員室を二分する話題であった。そして、回答者の抽出方法や質問文・選択肢の内容が合致しているわけではないものの、2015年の連合総研の全国調査と結果が酷似している点は、興味深い。つまり学校現場では長年にわたって変わらず、部活動を学校で維持していくべきと考える教員と、地域に移行すべきと考える教員が、同程度存在しつづけてきたのである。

■保護者は9割超が学校部活動を支持

 さらに言うと、保護者の場合は、地域ではなく学校の部活動に対する期待が圧倒的に大きい。

 スポーツ庁は2017年7月に実施した最新の全国調査「運動部活動等に関する実態調査」で、運動部生徒の保護者に対して、持続可能な部活動のあり方をたずねている。公立中学校の保護者の場合、6つの選択肢のなかでもっとも多かった回答は、「学校・教員が担う」の43.0%で、「地域の活動へ移行」はわずか7.0%にとどまった。

 なお、6つの選択肢のうち3つが学校部活動を前提とするもので、その合算値と地域移行の数値のみを対比させると、前者が92.0%、後者が8.0%となる[注2]。

 そしてこの傾向もまた、約20年前とほとんど変化がない。上述の文部省の調査結果によると、中学生の保護者では、学校部活動を基盤とすべき旨の回答が計94.2%であったのに対して、地域移行を目指すべき旨の回答は計5.8%であった[注3]。

■部活動を指導したい教員、したくない教員

 上記の各種調査結果を、「学校が担う」「地域に移行する」というかたちで整理すると、教員と保護者における部活動の完全外部化(地域移行)に対するここ20年間の意識を読み取ることができる。

 第一に、教員集団の部活動に対する見方は分断されている。部活動を学校で担うべきか否か、教員は部活動指導を本来的な業務として引き受けるべきか否か。なるほど、教員のなかには、部活動を指導したくて教職に就いたという者が年齢・性別を問わず多くいる一方で、部活動で時間を奪われることが多大なストレスになっている者もいる。

 地域移行について職員室のなかは賛否真っ二つであるものの、しかしながら、今回は言及できなかったが、そもそも地域のほうで受け皿がほとんど整備されていないという重大な課題がある。それゆえ結局は、従来どおりに全体として教員集団が部活動を引き受けるという事態がつづいていく。

■部活動=学校という当たり前

 第二に、保護者は賛否真っ二つということはなく、大多数が学校での指導を期待している。これはある意味、学校の教員に対して、保護者が厚い信頼を抱いているとも言える。

 だが、言い換えるならばそれは教員への甘えでもあり、そうした保護者の要望が賛否両論のはずの職員室を「無風状態」にしてしまっている背景要因とみることもできる(拙稿「教師の働き方改革が進まない学校の『世論知らず』」)。

 第三に、教員と保護者のいずれにおいても、過去約20年の間に大きな変化が認められない。部活動は学校で実施するのが当たり前となっており、それを抜本的に学校から切り離すということがそもそも意識にのぼっていないと考えられる。

 1990年代後半頃から外部指導者の活用というかたちで、部活動の外部委託が徐々に進んできたものの、これは学校部活動を前提とするもの、さらには、学校部活動を充実させるものとも言える。だが、部活動とは生徒にとって自主的な活動にすぎず(拙稿「自治体ぐるみで部活動の強制加入」)、その意味で学校を基盤とする必要はない。

 以上、私たちの意識はそもそも部活動=学校という括りから逃れていないことが明らかとなった。文部科学省がどれほど大胆な提言をしようとも、私たちの意識がこのままでは、改革の気運が高まることもなく、その実効性はきわめて低いものとなるだろう。部活動改革の成否は、私たちが抱いている「当たり前」からの脱却にかかっている。  .