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海水の中に含まれる酸素が少なくなることで生き物が住めなくなる「デッドゾーン」が全世界的に増えており、今後の地球の生態系に大きな影を落とす可能性があることが研究によって明らかになっています。

Declining oxygen in the global ocean and coastal waters | Science
http://science.sciencemag.org/content/359/6371/eaam7240

Oceans suffocating as huge dead zones quadruple since 1950, scientists warn | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2018/jan/04/oceans-suffocating-dead-zones-oxygen-starved

この研究を行ったのはアメリカのスミソニアン環境研究センターのデニス・ブライトバーグ氏らによる研究チーム。海水の中に酸素が溶けこむ溶存酸素量がゼロの水準に達している水域が1950年のデータの4倍に増えているほか、沿岸部で非常に酸素濃度が低い海域も10倍に拡大されていることが判明しています。

溶存酸素量が減少する原因はいくつか有力な説が唱えられていますが、その一つが「海水温が上昇する」というもの。水中に溶けこむ酸素量は水温が高くなるほど少なくなるという特性があるため、特に赤道付近で温められた海水に含まれる酸素量が減少する傾向にあるとのこと。その他、沿岸部で溶存酸素量が減少する原因には土壌や河川を通じて海に流れ込む養分を多く含んだ土壌や農地の肥料、下水などが挙げられます。

科学誌「Science」に発表された研究論文は、この問題を初めて包括的に分析したもので、「地球の歴史における主要な絶滅事象は、気候の温暖化や海洋の酸素欠乏に関連している」と記しています。ブライトバーグ氏はその中で「私たちは今向いている方角を目指して進みます。しかしその先で人類を待ち構えているのは、とてもそのまま進みたいとは思えなくなるほど恐ろしいものです」と警鐘を鳴らしています。

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しかしブライトバーグ氏は同時に、「これは解決できる問題です」と展望を語ります。ブライトバーグ氏は、アメリカのチェサピーク湾やイギリスのテムズ川で酸素量が回復された例を挙げ、「気候変動を食い止めるためには世界的な努力が必要ですが、世界の各地で少しずつ取り組みを進めることで富栄養化による酸素の減少を食い止めることは可能です」と語っています。

しかし海洋の酸素量がもたらす影響は、世の中に大きな影響を及ぼします。特に大きな影響を受けるのは漁業に関連する分野で、溶存酸素量が減少することで魚が住めなくなることで水揚げ量が減少し、全世界で3億5000万人ともいわれる漁業従事者の生活が影響を受け、人々の食糧サイクルや自然の生態系までもが影響を受けることとなります。

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今回の調査で明らかになった海洋のデッドゾーンは500か所以上にもおよび、これは1950年の「50か所」というデータを大きく上回るものとなります。1950年当時の調査でどの程度のエリアがカバーされていたのかを念頭に置いておく必要はありますが、今回の研究でもまだ全ての海域をカバーできていないとのことで、デッドゾーンの増加傾向はほぼ間違いないものと考えられるとのことです。

海中脳酸素濃度が低下することで、別の「負のフィードバック」も引き起こされるとのこと。非常に低い酸素レベルで増殖する微生物は、二酸化炭素よりも300倍強力な温室効果ガスである「亜酸化窒素」を多く排出します。これにより地球の温暖化はさらに加速され、海水温がますます上昇することが起こり得ます。

GIGAZINE 2018年01月05日 19時00分00秒
https://gigazine.net/news/20180105-ocean-deadzone-quadruple/