女性警察官九州少なく 男性優位の文化影響? 育休復帰支援不十分? 福岡全国最下位
2018年01月23日06時00分 (更新 01月23日 06時43分)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/388299/

 全国の都道府県警察で働く地方警察官のうち女性警察官が占める割合が、九州の6県警で全国平均を下回っていることが西日本新聞の調べで分かった。昨年4月現在で福岡、宮崎両県警はともに最下位で、大分が43位、熊本41位、長崎38位、鹿児島は37位だった。はっきりした理由は不明だが「『九州男児』に象徴される男性優位の文化が影響しているのではないか」と指摘する識者もいる。
 警察庁によると、全都道府県警に勤務する地方警察官は計26万2130人。うち女性警察官は2万3410人で、全体の8・9%を占める。九州7県警では、福岡6・9%▽佐賀9・0%▽長崎7・6%▽熊本7・2%▽大分7・0%▽宮崎6・9%▽鹿児島7・7%−で、全国平均を上回るのは佐賀県警だけだった。
 男女の採用割合については各都道府県警が独自に決定。近年は警察庁が女性警察官の採用・登用拡大を進めており、九州各県警も足並みをそろえて毎年十数%の割合で女性を採用している。警察庁の担当者は「(差が出る)明確な理由は分からない」と話す。
 女性用トイレや更衣室など設備面の不備で採用数そのものを限定していたり、産休や育休後の職場復帰を支える環境が不十分だったりする要因が考えられるが、福岡県警のある幹部は「(九州では)結婚や出産後に退職し、家庭に入る女性が多いからではないか」。女性採用を進めて割合を引き上げてきた県警もある一方で「福岡は暴力団犯罪が多い土壌ということもあり、そこまで本腰を入れてこなかったのでは」(別の幹部)との声もある。宮崎県警の幹部は「当初の目標値自体が低かったかもしれない。女性警察官を受け入れる施設が整っておらず、限界があった」と振り返る。
 男女共同参画問題などに詳しい番敦子弁護士(東京)は「九州に限らず女性警察官を増やすにはハード、ソフト両面での環境整備が不可欠」と指摘した上で「(女性警察官が少ないという)一定の傾向が数字に表れているのであれば地域特有の文化が影響している可能性がある。組織全体の意識改革が必要だ」と話している。
■高まる重要性 採用に力
 性犯罪が後を絶たず、ドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー被害が増加する中、支援に当たる女性警察官の重要性は高まっている。警察庁は女性の採用拡大、幹部登用に力を入れ、各都道府県警も女性の活躍を後押ししている。
 警察庁は2012年の警察白書で「23年4月までに女性の割合を約10%まで引き上げる」との目標を示し、13年1月には女性警察官の活用に関する有識者会議を設置。キャリアアップ支援や女性専用設備の充実などの提言を受け、各都道府県警に通達した。その結果、全国の女性警察官の割合は12年の6・9%から17年は8・9%に上昇した。
 女性警察官の割合が9・7%の埼玉県警では、捜査現場で活躍する女性を増やそうと15年4月に全国初の「女性機動鑑識班」を設置。9・3%の千葉県警は、結婚や育児を理由に退職した女性警察官に即戦力として復帰してもらう「再採用制度」を導入している。
 福岡県警も13年から女性警察官を対象にした研修を始め、今年1月には女性の活躍をテーマに幹部研修会を開催。女性管理職が3割を占める化粧品大手「資生堂」の元幹部を講師に招き、幹部約360人が女性の働きやすい職場づくりについて学んだ。同県警警務課は「女性警察官が仕事と家庭を両立できる職場を目指したい」としている。