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 内閣府は23日、国の財政見通しを示す最新の試算を公表した。財政再建の指標として政府が2020年度の黒字化を目指していた国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)は、高成長を見込んでも20年度の赤字幅が10・8兆円に拡大。安倍晋三首相が昨年秋に決めた消費税収の使途拡大によって、財政の悪化が一段と進む。

 PBは、黒字になると、社会保障や公共事業などの政策経費を借金以外の税収などで賄えることを示す指標で、内閣府が年2回、改定値を公表している。今回の試算では、19年10月の消費増税で得られる税収増のうち、借金返済に回すはずだった1・7兆円分を教育無償化などに使うとの安倍首相の方針を反映。生産性の伸びを見直すなどしたため、経済成長率も従来より引き下げられた。

この結果、高い成長を見込んだ場合でも、20年度のPBの赤字幅は、昨年7月の試算時の8・2兆円から2兆円超も拡大。高齢化で伸びる社会保障費などの歳出の抑制策を何も講じない場合、PBが黒字になる時期は従来の試算の25年度から27年度へと2年遅れる見通しとなった。

 安倍首相は昨年9月に衆院解散を表明した時、消費税収の使途変更と合わせて、PBを20年度に黒字化する目標の断念を表明した。政府は今回の試算をもとに新たなPBの黒字化目標や達成に向けた歳出削減策などの計画を6月までにまとめ、「骨太の方針」に盛り込む方針だ。

 焦点は黒字化の時期を27年度からどれだけ前倒しできるかだ。財政再建に本腰を入れ、黒字化の時期の大幅な前倒しを目指す場合、歳出の抑制を一段と進める必要がある。だが、政府・与党内には経済成長を優先し、さらなる歳出拡大を求める声も根強く、調整は難航しそうだ。(松浦祐子)

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