4月からの新年度を前に、将来計画の策定に取り組む全国の自治体が「平成」の次の元号となる2019(平成31)年5月以降の表記に頭を悩ませている。計画期間や行程表の記載で和暦を使おうにも、新元号が発表されておらず、国の統一ルールもないためだ。兵庫県内では、元号変更後の時期であっても平成の表記で通したり、19年度以降は西暦だけで表現したりと判断が分かれている。(小川 晶)

「平成30年度から平成35年度までの6年間」。今月15日まで県民意見を募集していた「兵庫県がん対策推進計画」改定案の計画期間だ。

天皇陛下の退位日については、昨年12月1日の皇室会議で19年4月30日と正式に決定。改定案最終年度の「平成35年度」は次の元号に移行している時期に当たるが、策定した疾病対策課は「特に理由はなく、これまでの表記にならった」としつつ、確定版では西暦と併記するなど対応を検討するという。

一方、同じ兵庫県の計画でも、昨年12月に政策調整課がまとめた「活力あるふるさと兵庫実現プログラム」(2017〜21年度)では、元号の変更を明確に意識。年度ごとの行程表では、17、18年度はそれぞれかっこ書きで「H29」「H30」と付けたが、19〜21年度はあえて外している。

同課の担当者は「昨春ごろから元号の取り扱いについて協議し、新たに策定する計画案では19年度以降の表記を西暦のみと決めた」と明かすが、県庁内で一定の基準があるわけではないといい、「あくまで課としての判断」と強調。過去の計画などの表記を精査する予定もないそうだ。

県内市町では昨年12月、神戸市のバスターミナル整備基本計画案や宝塚市の地域包括ケア推進プラン素案、たつの市の本庁舎整備基本計画素案などが公表されたが、この3案は、いずれも次の元号に当たる時期を平成で表していた。

「平成41年度」までの計画スケジュールを盛り込んだ神戸市の担当者は「改元が取りざたされる以前から使っている資料のため」と話す。ただ、案の作成に当たっては、年度の表記をどうするかが検討課題として挙がっていたという。

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全国の自治体が同様の悩みを抱えているようで、元号変更に伴う公文書の取り扱いを所管する内閣府大臣官房総務課には、全国の自治体から週に1件ほどの問い合わせが寄せられている。国の法令では、官公庁の公文書に和暦使用の義務規定はないが、慣例で使い続けている自治体が多いためだ。

新しい元号は今年中にも発表される見通しだが、同課の担当者は「元号法を解釈すると、次の元号が施行される19年5月までに作成する文書類では、何年後であっても平成で表記することになる」と説明。一方で、今回のように元号変更があらかじめ分かっている場合の具体的な対応は検討しておらず、「現時点では、各自治体の判断に任せている」としている。

【国が明確な基準を 京都産業大の所功名誉教授(日本法制文化史)の話】現時点の元号が全てのベースになるという原則論に従えば、あえて西暦などを使う必要はなく、平成で通せばいい。ただ、自治体が元号の取り扱いに悩む現状があり、実際に和暦や西暦の表記がばらばらになっている以上、公文書の統一性を保つためにも、国は明確な基準を示すべきだ。

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2018/1/31 06:55
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