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 両眼とも視力が0・2に低下した千葉県柏市の中学1年、綿屋実優(みゆ)さん(13)は、寝ている間に特殊なコンタクトレンズを着ける視力矯正法で、日中の視力が両眼とも1・0になった。近年、子供の近視の進行を抑制する効果も報告され、注目されている。ただ、適切にレンズを管理しないとトラブルが起きる恐れもある。(加納昭彦)

 近視の子供は増えている。文部科学省によると、裸眼の視力が1・0未満の子供は2017年度、小学生33%、中学生56%、高校生62%にのぼった。40年前と比べると14〜24ポイント増えた。同省の担当者は「ゲームやスマホの長時間利用が影響している」と分析する。

 目は、入ってくる光を角膜、水晶体という二つのレンズで屈折させ、網膜上で焦点を合わせることで像としてとらえる。しかし、眼軸長と呼ばれる眼球の奥行きが伸びてしまうと、網膜よりも手前で焦点を結んでしまい、像がぼやける。これが近視だ。

 綿屋さんが使った視力矯正法「オルソケラトロジー(オルソ)」は、特殊なレンズで角膜の前面を平らにして焦点が網膜上で結ばれるようにする。角膜の形状は一定時間保たれるため、睡眠中に着ければ朝に外しても日中の視力は維持される。ただし、本来の視力が回復するわけではないため、毎夜着ける必要がある。

 オルソは米国で考案され、2002年に米食品医薬品局が初めてレンズを承認した。日本では09年に厚生労働省から承認を受けたレンズが登場した。現在は4社が製造・販売している。レンズの価格は治療費に含まれ、両眼で10万〜20万円ほど。保険はきかない。

 この年、日本コンタクトレンズ学会がまとめた指針には「使用は20歳以上」という条件がついた。安全上の懸念からだ。ただ、指針に拘束力はなく、実際に利用するのは未成年が多い。筑波大講師の平岡孝浩さんが、オルソを導入している眼科クリニックなど9施設でレンズを使った約400人を調べたところ、6割近くが未成年だった。

 国内外の研究で未成年への有効性と安全性が確認されたため、指針は昨年12月に改定され、「慎重処方」を条件に未成年にも認められた。昨年12月からオルソを使い始めた綿屋さんは「思い切りバドミントンができるし、黒板の文字もよく見える」と喜ぶ。柏眼科クリニック(千葉県柏市)院長の関根康生さんは「指針で禁じられていたので、慎重になる保護者も多かった。未成年の利用がもっと増えるのでは」と話す。

 オルソは子供の近視の進行を抑える効果も期待される。平岡さんが5年間、子供43人(8〜12歳)の近視の進行度をオルソと眼鏡で比べた結果、近視につながる眼軸長の伸びはオルソの方が3割抑制できた。海外でも同様の報告は相次ぐ。

 注意点もある。しっかりとレンズを洗浄するなど適切に管理しないと結膜炎などになる恐れがある。目をかくなどしてレンズがずれると、外した後に十分な視力が出ないこともある。

 平岡さんは「オルソは、子供の近視の進行を抑制する方法として中心的な役割を果たす可能性がある。注意点を理解した上で検討してほしい」と話している。

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