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2018年02月19日
大坂 直樹 : 東洋経済 記者

午前2時の東急田園都市線渋谷駅。ホームの先に広がるトンネルの向こうに、黄色いヘルメットをかぶりオレンジ色のユニホームを身にまとった大勢の作業員たちの姿が浮かび上がった。最終電車が走り去り、階上のコンコースは人通りが途絶えたが、地下の線路上で大勢の人が作業をしている様子は、電車が行き交う日常の光景からは想像もつかない。2月7日未明に渋谷―池尻大橋間の電線類の点検作業が報道公開された。

田園都市線は昨年10月19日に三軒茶屋駅構内で停電が、同11月15日には池尻大橋駅で架線トラブルが発生し、長時間にわたる運休を強いられた。事態を重く見た東京急行電鉄は田園都市線の地下区間(渋谷―二子玉川間)で電線類を対象に、緊急安全総点検を実施したのだった。

ケーブルに281カ所もの傷

総点検の作業自体は昨年中にすでに終了しており、今回公開されたのは、総点検をどのように行ったのかという「実演」だ。地下を走る列車の窓から、トンネルの壁に複数のケーブルが設置されているのを見たことがあるだろう。真っ黒に汚れた信号ケーブルの表面を作業員たちは手で触り、傷がないかチェックして歩く。従来は年1回の目視点検で済ませていた。だが、汚れた状態では、細かい傷が生じていても目視ではわからないかもしれない。総点検ではトンネル上部にある架線などのケーブル、トンネルや駅ホームの下部にある高圧配電ケーブルにも触手検査を行い、これらのケーブル類に281カ所もの傷が見つかったという。

東急だけでなくJRや私鉄各社で大きな輸送トラブルが立て続けに起きている。国土交通省は鉄道輸送トラブルの再発防止や影響軽減に向けた対策に関する検討会を2月2日に立ち上げた。国交省では輸送トラブルの構造的な要因として、ベテランから若手への技術伝承、鉄道会社直轄作業と外注作業との関係性などを検討するとしている。どちらもトラブル多発の遠因としてしばしば指摘されているものだ。
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