http://www.bbc.com/japanese/43165466

2018/02/23
ナビン・シン・カドカ環境問題担当記者、BBCワールド・サービス

東シナ海で先月、タンカーが貨物船と衝突し漂流した後に沈没した海域で、事故後も何日間にもわたり漁船の操業が続いていたことが、BBCの取材で23日までに明らかになった。

操業を続けていた漁船の大半は、中国船籍だった。

第三者の複数の専門家によると、操業が停止されたのは事故からかなりの日数がたってからのことだった。中国のメディア各社も同様の指摘をしている。

東シナ海周辺の地域では、タンカーから流出した油で海産物や海洋生物が汚染される可能性が強く懸念されている。
BBCが入手した衛星写真やデータは、事故海域に漁船が入っていたことを示している。

1月6日に貨物船と衝突し、14日に沈没したイランのタンカー「サンチ」は13万6000トン、ほぼ100万バレル相当の「コンデンセート」と呼ばれる超軽質原油を韓国に輸送していた。
専門家らによると、これほど大量の超軽質原油が海に流出したのは過去に例がない。高い毒性の恐れがあり、透明で目視できないため、原油流出事故にありがちな、光を反射する油膜が海面に広がる様子も確認できない。

中国は海産物の主要な輸出国で、事故があった海域はカニやイカ、キグチやサバなどの魚類が豊富なことで知られる。
BBCは、中国の国家海洋局に漁業活動について繰り返しコメントを求めたものの、現時点で回答は得られていない。
中国農業部(農水省に相等)のウェブサイトによると、事故後は現場から半径30海里の海域が立ち入り禁止になっている。

漁業活動の監視を専門とする非営利団体オーシャンマインドのチーフ・アナリスト、ブラッド・ソウル氏はBBCに対し、「我々の分析では、沈没地点から半径60海里内を含め、事故海域で漁業活動があったと推測される」と語った。
オーシャンマインドは、1月6日から25日にかけて事故海域で400隻以上の漁船が操業していたとみている。そのうち13隻は、沈没地点から60海里以内で確認された。

さらに、「1月26日から2月14日にかけて、当該海域に漁船146隻の活動が認められた。また沈没地点から60海里以内では2隻の漁船の活動が認められた」という。
「サンチ」は、衝突した場所から南に50〜100海里漂流し、沈没したとみられる。そのため、漂流する間もコンデンセートの流出は続いていたもようだ。
中国交通運輸部によると、沈没したタンカーは水深115メートルの場所で発見された。

オーシャンマインドのソウル氏は分析手法について、操業時の漁船は通常よりも遅い速度で移動するという特徴を使い、操業中らしい漁船の信号に限定して位置を調べたと説明した。
漁船は、トランスポンダーと呼ばれる無線信号機を使って位置を知らせている。
(リンク先に続きあり)

(英語記事 'Fishing continued' even after East China sea oil spill)

漁船から発せられた信号を使い、漁業活動が活発だった場所を赤で示した地図。上図は1月6日〜25日、下図は1月26日〜2月14日。青緑の円は沈没地点とその周辺60海里(オーシャンマインド/イクザクトアース調べ)
https://ichef-1.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/D7C2/production/_100143255_sanchi_incident_640_v2-nc.png