京都市武道センター(京都市左京区)の弓道場で、隣接地に設置された多数のエアコン用室外機が、弓道関係者を悩ませている。平安神宮の境内に昨年12月オープンした商業施設の空調設備で、約30台の室外機から発生する稼働音や冷排気に、弓道団体は「うるさくて競技に集中できない」と改善を訴えている。
 室外機が設置されたのは、平安神宮の境内の西端で、弓道場との隣接地。飲食や土産物など29店舗が出店する商業施設「京都・時代祭館 十二十二(トニトニ)」のための設備で、排気が上方に吹き出す業務用の機器が、弓道場の塀に沿って密集するように並んでいる。
 弓道場を所有する京都市や、競技団体の市弓道協会によると、室外機の設置について商業施設側から事前の連絡や環境保全のための調整はなかったという。「ゴー」という稼働音は選手が弓を引く射場からも聞こえ、隣の営業時間帯は途切れず響くという。
 京都市市民スポーツ振興室は市弓道協会の要望を受け、現場で騒音の大きさを確認した上で、今年1月、同施設の事業主「京都平安振興財団」に改善を申し入れた。財団からは、対策案を検討しているとの返答があったが、具体的な内容はまだ示されていないという。
 武道センターは、戦前まで日本の武道の振興を担った大日本武徳会発祥の地として知られる。
 近的(28メートル)10人立ちの設備を持つ弓道場は、都市間交流スポーツ大会の公式戦や、全日本弓道大会の練習会場として多くの弓道家が利用している。
 市弓道協会の赤松弘次郎会長(72)は「弓道は『立った禅』とも言われるほど、静寂の中で自己と向き合うことを重んじる。5月に全日本大会も控えており、早急に元の環境に戻してほしい」。京都府弓道連盟の野崎隆司事務局長(68)は「武道の本場として、最近は世界中から愛好家がやってくるほど。弓術は古来の信仰とも関係が深いだけに、こんな姿は恥ずかしくて外の人に見せられない」と嘆く。
 京都平安振興財団は、京都新聞の取材に対し「建物の設計事務所および建築会社から答えさせる」としているが、これまで回答はない。

京都市武道センターの弓道場(左側)の塀を隔てた敷地で稼働音を響かせる多数の業務用室外機(京都市左京区)
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