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2月28日 17時30分
来年春に卒業する大学生を対象にした企業の会社説明会が3月1日に解禁され、ことしの就職活動が本格的にスタートします。かつて「氷河期」と言われた就職戦線は大きく様変わりし、ここ数年は深刻な人手不足を背景に学生優位の「超売り手市場」が続いています。引く手あまたの学生がいる一方で、「計画した人数を採用できるのか」と胃が痛い思いをしている企業の人事担当者も少なくないようです。この「超売り手市場」、いつまで続くのでしょうか。
(経済部記者 豊田太)

企業は選ばれる立場

会社説明会の解禁を控えた今月27日、東京・渋谷区のビルの会議室に広告業界やインターネット業界の14社から採用の決裁権を持つ責任者が集まりました。開かれていたのは「ドラフト会議」と銘打たれたイベント。彼らの前に事前の選考をクリアした9人の大学3年生が順番に登場し、5分の持ち時間で自己PRしていきます。

大学の応援歌を歌い出す女子大生に、アルバイトやサークル活動の経験を熱く語る男子学生…。学生の話を聞いた企業の担当者は「内定レベル」「1次面接免除」「ランチ」「いいね」などと書かれた札を上げます。さながらオーディションのようなこのイベント。主催者側は、正式な採用選考の場ではないと説明しますが、終了後に行われた懇親会では、企業の担当者がさっそく目を付けた学生に歩み寄り、自分の会社の選考に参加するよう熱心に呼びかけていました。

取材をしてみて印象的だったのは、審査員を務めた企業の担当者が「実は選考されていたのはわれわれの方」と口をそろえていたことです。

「通常の会社説明会では企業が一方的に学生に説明するだけだが、われわれの方から学生にアプローチできる機会は貴重だ」

「受け身では一緒に働きたいと思える人材には出会えない。こちらから動かないとダメ」

「うちはベンチャーでネームバリューもないので、大手企業と戦って学生に選んでもらわないと」

解禁前になんとか優秀な人材との接点を持ちたいという、企業側の危機感を感じました。

超売り手市場はいつまで

企業の危機感を裏付けるデータもあります。大手人材サービス会社「リクルートキャリア」がおよそ1200社に調査したところ、去年の採用活動では半数以上の企業が計画していた人数を採用できなかったと回答したのです。

去年、採用できなかった分をことしの採用活動で穴埋めできる保証はありません。企業側の悩みは深まるばかりです。こうした学生優位の「売り手市場」は今後も続くのでしょうか。

これまでは、景気がよくなり企業が攻めの経営をするようになると採用数が増えて「売り手市場」に、逆に、景気が悪くなると採用数が絞られ「就職氷河期」という学生受難の時代へと、景気の循環に即したサイクルを繰り返してきました。

だとすれば、いずれ「就職氷河期」が到来し、人手不足も落ち着くのではないか… と考えても不思議はありません。しかし、専門家は今回の「売り手市場」には構造的な理由があると指摘します。

リクルートキャリア就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「景気連動型の要因だけでなく、今後、大卒者が本格的な減少局面を迎えるという構造的な要因がある。若い人の減少が約束された未来である以上、企業としては、今後、長く事業を続けていくためにも、今のうちに若い人を一定のペースで採用しなければという危機感が強い」と話します。

企業側には、景気の循環とは関係なく、人材が確保しにくい状況が続くのではないかという懸念があるというのです。
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