京都大の岡田知弘教授ら学識者や弁護士5人が、現憲法や大日本帝国憲法を載せた手のひらサイズの「ポケット憲法」を発刊、普及させる取り組みを始めた。安倍晋三首相が年内の国会発議を視野に入れるなど改憲が現実味を帯びる中、「まずは憲法を手に取って知ることから始めて、自ら考える一助にしてほしい」と話す。

 呼び掛け人は、代表を務める岡田教授と、龍谷大の奥野恒久教授、京都大の高山佳奈子教授、ともに京都弁護士会所属の中村和雄弁護士と尾藤廣喜弁護士。

 憲法を議論する際に気軽に取り出して使えるようにと、ポケット憲法には現憲法と大日本帝国憲法の全文と、1947年に文部省(当時)が出した「あたらしい憲法のはなし」の抜粋を載せた。絵本作家いわさきちひろさんのイラストを添えた。1冊100円程度のカンパを募る。

 このほどサイト「手のひらに憲法プロジェクト」を立ち上げた。ポケット憲法の内容のほか、自由民権運動家の植木枝盛が起草した「東洋大日本国国憲案」なども紹介して憲法の源流を考える。会員制交流サイト(SNS)を使い、取り組みを全国に広げる。

 京都では、府知事を7期務めて革新府政を築いた故蜷川虎三氏の発案で府が65年にポケット憲法を作成。77年まで発刊し、その後も労働組合などが配布し、全国に広がった歴史がある。

 今回の発刊では、明治憲法から何が変わったのかを知ることで改憲論議のたたき台にする狙いから、大日本帝国憲法も含めた。岡田教授は「改憲論議は抽象論や感情論に陥りがち。憲法の全体像を理解した上で個々の条文改正を考えるべきであり、そのための素材を提供したい」と話す。ポケット憲法の冊子の希望者は、同プロジェクトのメール(info@pocketkenpo.com)か電話075(211)1161で申し込む。



京都新聞 2018年03月03日 19時40分
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20180303000118