文部科学省が推進している部活動の外部委託に関して、岐阜県多治見市が委託した多治見中学校のバスケットボール「ジュニアクラブ」で2016年9月、当時1年生の男子生徒が練習中、監督だった60代の男性から蹴るなどの暴行を受け、男性が暴行罪で略式命令を受けていたことが分かった。学校や市などは「任意の校外活動で学校は無関係」と、生徒の父親(38)の相談に取り合わなかった。保護者らは「学校が問題に関わらないのはおかしい」と批判している。

 生徒や男性によると、暴行事件は中学校体育館で練習中に起きた。生徒がシュートが決まらないことにイライラしてボールを壁に向かって蹴ったところ、男性に尻を1回蹴られた。生徒は謝罪したが、その後もほおや肩、胸を手で押されたりしたという。

 両親によると、生徒は右中指挫傷など2週間のけがを負い、警察に被害届を提出。男性は暴行罪で略式起訴され、罰金の略式命令を受け監督を辞任。男性は取材に「しつけのつもりだった。申し訳なかった」と暴行を認めた。

 生徒はクラブを辞め、精神科に3カ月通院、適応障害と診断された。「大好きなバスケをやめざるを得なかった。今も暴力を受けたことを思い出すと怖い」と語る。今年1月、精神的苦痛を受けたとして、120万円の慰謝料を求め多治見簡裁に調停を申し立てた。

 多治見市の中学校で部活動の外部委託が始まったのは02年。全8中学校の平日午後5時以降と土日は、学校施設で地元の経験者らがボランティアで指導している。多治見中の丸山近(ちかし)校長は「ジュニアクラブは子どもが任意で入り、保護者が運営している組織。(活動中の事故などの)最終責任は設置者である保護者や指導者にある」と話す。

 だが生徒の両親は「午後5時までが部活動で、それ以降はクラブといっても、心情的には受け入れがたい」と批判する。

 多治見市の部活動外部委託は、先進事例として注目されている。17年度は10回前後の視察を全国の自治体から受けたほか、スポーツ庁が昨年11月に開いた部活動に関する検討会議では、市担当者が取り組みを発表した。

◆「学校教育」か「校外活動」か 保護者側と認識にズレ

 外部委託によるトラブルは多治見市以外でも起きている。大分市によると、市内の中学校が外部委託した女子バレーのクラブで09年、生徒が鉄柱に指先を挟む事故が起きたが、外部指導者が責任を認めず謝罪しなかったため、保護者らとトラブルに。クラブは学校の部活に戻ったという。

 文部科学省が昨年12月にまとめた教員の働き方改革の緊急対策には、将来的には指導の担い手を学校から地域に移行する案が盛り込まれた。外部委託された部活動が学校教育の延長なのか、地域の活動なのかはっきりさせないまま外部委託が進もうとしていることに、専門家は警鐘を鳴らす。

 部活動の問題に詳しい早稲田大スポーツ科学学術院の中澤篤史准教授(身体教育学)は多治見市のトラブルについて、「学校側は『学校外の活動』と認識していても、保護者側は『学校活動の延長』と捉えていたのではないか。事故やトラブルに対応する責任体制は十分ではなかった」と批判。「地域に移行するのであれば、地域の側に子どもを守るための体制を整えなければ、トラブルはなくならない」と指摘する。

 部活動などスポーツ事故に詳しい名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「保護者にクラブ運営が丸投げされている状況はトラブルが起きやすく危険。子どもの安全が置き去りにされている」と批判する。

2018年3月7日 09時00分
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018030790085812.html

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