飼育員の声で「投げキス」のポーズを決めるハマ=城崎マリンワールド提供
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東日本大震災を機に福島県から兵庫県豊岡市瀬戸の水族館「城崎マリンワールド」にやって来たトドが、人間の言葉を20以上聞き分ける能力を開花させた。学会でも「日本で最も多くの言葉を聞き分けられるトド」のお墨付きをもらった。その能力を生かし、今では芸達者な人気者として新天地で活躍している。

 トドは8歳の雌の「ハマ」。震災があった年の6月、飼育が難しくなったとして福島県いわき市の水族館「ふくしま海洋科学館」から引き取られた。マリンワールドによると、年長の雌のトドがハマを子どものように可愛がり、次第にハマも他のトドたちとなじんでいったという。

 しばらくしてハマが飼育員の声だけによる指示で「敬礼」の技ができることが分かり、「ボイスサイン」によるトレーニングを本格的に始めた。2年後には、飼育員の声による指示で「イヤイヤ」のポーズをとったり、前脚で「バイバイ」をしたりと、21種類の技を覚えるまでに。

 昨年12月には、マリンワールドがこの成果をアシカやトドなどを飼育する全国の水族館関係者が集まる「全国海獣技術者研究会」に報告。「10種類を超える音声をアシカ科の動物が識別した事例はない」として、国内で最も多くの言葉を聞き分けられるトドと認められたという。

 現在、ハマが聞き分けられる言葉は23種類。今は、「トウリツ」の指示で倒立のポーズを決める技などを訓練中という。ハマたちの技は、1日5回ある「トドのダイビング」ショーの中で見ることができる。飼育員の佐々木雅大さんは「新天地で頑張るハマの姿を通して、福島の人たちに勇気を与えたい」と話す。(藤本久格)

2018年3月10日08時03分
朝日新聞デジタル
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