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2018年03月22日
本田 雅一 : ITジャーナリスト

ダイソンが3月20日に発表した新型コードレス掃除機「Dyson Cyclone V10」は、掃除機の本質的な要素を高めることで、新しい世代の幕開けを感じさせた画期的な製品だ。価格は、ダイソン公式ストアで6万9984〜9万9144円(付属アタッチメントの数による)。製品の成熟が進み“機能差”で商品の差異化が進む中、個々の機能や性能だけでなく、基本構造から見直されたフルモデルチェンジである。

バッテリーインジケータや、ゴミ捨てサイン、フィルタ掃除サインなど、一部に細かな使い勝手を向上させる新機能も盛り込まれているが、それらは新製品の本質ではない。この製品の本質は、単なるマーケティングワードではなく、本当の意味で「コード付き掃除機は不要」と言えるだけの基盤となる性能、使いやすさを実現したことにある。

新製品で「新鮮さ」を出せなくなっていた

Cyclone V10の開発アプローチは、とかく“機能”に走りがちな他の家電メーカーとは一線を画している。イノベーションに対する考え方の違いが明確だ。

かつてサイクロン集塵方式の実用化でイノベーションを起こしたダイソンだが、技術の進歩でコード付きのキャニスター型掃除機からコードレスのスティック型掃除機への移行が進み、それも改良が進み始めると、新製品が出ても以前ほどの新鮮さを出すことが難しくなっていた。

それは、いわゆるイノベーションのジレンマといったものではない。十分に進化し、製品の満足度が高くなった結果、買い替えサイクルが長くなった。また体験レベルが平準化して相対的なブランド競争力が下がってしまうといった、ごくありふれた現象だったと言えるだろう。

これが筆者が感じていたダイソンの掃除機に対するイメージ。ところが、Cyclone V10はそうした固定観念を打ち崩すものだったのだ。

ダイソンの公式サイトでは、細かな技術的な解説がなされているが、この製品の良さは“機能追加に頼らず、掃除機としての本質を高める”ことにフォーカスした点にある。
(リンク先に続きあり)