文部科学省は27日、中学校道徳の初めての教科書検定で、申請した8社の8点(計30冊)が合格したと発表した。全ての教科書がいじめや、東日本大震災などの災害を取り上げたほか、多くの中学生が日常的に使うSNSやスマートフォンに関する記述も目立った。中学校の道徳は2019年度から「特別の教科」となり、授業で検定教科書の使用が義務になる。

 教科書を審査する文科省の審議会が、道徳の教科書につけた検定意見は全部で184件。7件は「学習指導要領に照らして不適切」という内容で、「節度、節制」「友情、信頼」「我が国の伝統と文化の尊重」といった、指導要領が定める項目が十分に触れられていないと判断されていた。

 東京書籍は「我が国の伝統と文化の尊重、国を愛する態度」の項目が足りないと指摘され、花火や灯籠(とうろう)流しを紹介する読み物で「先人が築いてきたことをこれからの社会に受けつぎ、日本を発展させていくために、私たちにできること」の問いを追加。光村図書出版は「異性についての理解を深め」の取り上げ方が不十分とされ、「さまざまな『友情』」という記載を、「同性どうしの友情や異性との友情など、さまざまな『友情』」と修正した。

 一部の教科書は、指導要領の項目などについて、生徒が4〜5段階で自己評価をするページを設けた。教員側は道徳の評価を数値ではなく文章ですることになっているが、生徒の自己評価で数字を使わせることが適切かどうか、議論を呼びそうだ。

 内容では、いじめの被害者や加害者、傍観者の心情を考えさせるもののほか、東日本大震災を題材にした災害時の避難や、伝統文化を守る取り組みに関する読み物などが多かった。SNSのメッセージアプリの画面に似た絵を載せ、SNSのやりとりの注意点を考えさせる題材もあった。18歳選挙権をみすえ、選挙に触れる教科書もあった。

 中学校道徳以外では、高校の国語と数学、外国語(英語)と芸術など計60点の申請があり、いずれも合格した。(根岸拓朗)

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