中部5県の輸出額、リーマン後最高に 17年度 名古屋税関
2018/4/19 22:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29596320Z10C18A4L91000/

 中部が国際貿易港として存在感を高めている。2017年度は中部5県(愛知、岐阜、三重、静岡、長野)からの輸出額が18兆6427億円と、前年度に比べ9%増え08年のリーマン・ショック以降で最高だった。特に自動車の輸出入は「日本の玄関口」として完成車の輸出が中東を除く全地域向けで増加。輸入も伸びた。輸出額から輸入額を引いた貿易収支は過去10年で最高水準だった。

 名古屋税関が19日、名古屋港(愛知県)や三河港(同)、御前崎港(静岡県)などの輸出入額を公表した。
 海上物流は景気を敏感に示す指標として企業の生産や収益、個人消費を先取りする傾向がある。自動車や機械を中心に製造業が集積しているところに、世界景気の回復が追い風となり荷動きが活発になった。
 中でも自動車の輸出額は5兆6712億円と、8%増えた。トヨタ自動車は中国向けの高級車ブランド「レクサス」やインドネシア向けの高級ミニバン「アルファード」の輸出が伸びている。全体ではアジア(中国含む)向けが19%増の5278億円と、過去最高だった。
 管内の港からはトヨタ自動車の各工場に加え、スズキや三菱自動車が生産した自動車も輸出されている。スズキが欧州向けの小型車「スイフト」の生産をハンガリー工場から相良工場(静岡県牧之原市)に移管したこともあり、欧州連合(EU)向けは10%増加。米国向けも9%増えており、地域別で見ると世界的な景気回復の動きが鮮明になる。
 米国とEU、アジア(中国含む)の各地で輸出額が過去最高額となった自動車部品。けん引役は海外自動車メーカー向けのAT(自動変速機)だ。アイシン・エイ・ダブリュ(AW)は、中国では現地資本の自動車メーカー、欧州では仏グループPSAなど向けで販売が伸びた。
 自動車や車部品に次ぐ主力産業の工作機械は29%増の5469億円。特に伸びが大きかったのは中国向けで、7割増の1291億円だった。中国は人件費の高騰などを背景に、生産現場の省人化・自動化投資の動きが活発で、「生産ラインの機械を丸ごと入れ替えるケースもある」(関係者)という。オークマでは建設機械や自動車など幅広い産業向けが伸びた。
 輸出が好調なことを受けて貿易黒字もリーマン危機後の最高水準だ。輸出額から輸入額を引いた貿易収支は、8%増の9兆3405億円。リーマン危機直前である07年度の11兆4086億円には及ばないが、過去10年間では最高の水準となる。
 3月単月の輸出額は前年同月比5%増の1兆7494億円で、足元も輸出が堅調な状態が続いている。日銀名古屋支店は「輸出は増加基調にある」と判断している。米中の貿易摩擦や地政学リスクなど不確定要素はあるが、目先は良好な輸出環境が続きそうだ。