0001ガーディス ★
2018/05/02(水) 17:27:34.92ID:CAP_USER9日付が変わる少し前の午後11時。熊本市でもやしを生産する熊本製萠(せいほう)の従業員が出社してくる。1日に1・5〜2トンを生産する同社では、朝の市場出荷に合わせて真夜中に出荷作業を進める。「取れたてのもやしを消費者に食べてほしい。おやじの教えを守っている」と5代目社長の鳥井文博さん(34)。種を5〜7時間湯に漬け、発芽させ、暗室に入れ水を掛けて4、5日たって収穫、袋詰めして出荷する。作業のほとんどが夜間だ。
もやしは工業製品のように誤解されがちだが、温度管理や水の量などを少しでも間違えると腐ることもあり、細心の注意が欠かせない。だからこそ鳥井社長は「自分は生産者、職業は農業」と考える。季節や外気によって管理は異なり、暑い時期は配送時には氷を入れるなど気を配る。
社員の松下信一さん(47)は「もやしは生きている。うちのは濃厚で歯応えが抜群。どこのもやしでも同じと思われる食材だが、食べたら違いが分かる」と思いを語る。もやし作りへのプライドが、昼夜逆転の生活をして10年近い松下さんを支えている。
安売り商品の代名詞となるもやし。同社の適正価格への思いは強い。卸値で1袋(200グラム)30円以下なら、同社の場合は利益が出ない。150の販売先を持つ同社は、販路開拓などの経営努力と、均質な味への信頼から極端な安値で販売する売り先が減り、2年前にやっと赤字を脱却した。
鳥井社長は「食べ物が安価に流れる社会は、絶対に良くない。あえてこの時代、愚直でも効率の悪いもやしを作り続けたい」と言う。味や安心にこだわり、直接スーパーや飲食店に納品し、顔が見える関係を地域で築く経営スタイルは「小規模だからこそ」(鳥井社長)。大手企業だけが生き残る社会になってほしくないと願う。
営業を終えた飲食店から、同社に深夜かかってくる翌日分の注文の電話では「いつもありがとう」の言葉が添えられる。配送担当の浪花秀二さん(32)は「繊細なもやしを無事に運ぶのは苦労する。値段だけではない魅力をお客さんに届けたい」と話す。
原料が高騰、廃業100社超
工業組合もやし生産者協会によると、小規模・零細の業者は今も夜間に製造するところが多いという。協会に加盟する58社のうち、1年間に使う原料が50〜100トンの小規模業者は半数。協会の林正二理事長は「小規模だからこそできるサービスや商品の売り方がある」と強調する。
一方で、深夜作業を避け、早朝から工場を稼働させる九州の別の業者は「種によっても成長具合は異なるため、生産には細心の注意が必要。時間帯にかかわらず、どの経営者も苦労して作り続けている」と話す。
協会によると、2009年に全国で230社以上あったもやし製造会社・生産者は100社以上が廃業。卸値が抑えられる中で、原料の中国産緑豆の価格高騰を受け採算が悪化したためだ。17年産は緑豆価格が1、2割下がり、一部のスーパーで値上げの動きも出始めたことから、この1年で廃業には歯止めがかかっているという。
林理事長は「鮮度や手りという付加価値を高め、近隣の飲食店などとの信頼関係を築いていけば、健全な経営を続けていくことができる」と理解を求めている。
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