3年ごとに見直される国の中長期的なエネルギー政策の方針、「エネルギー基本計画」の新たな案がまとまりました。今回は温暖化対策の国際的な枠組み、「パリ協定」を踏まえて期間を2050年までとして、太陽光など再生可能エネルギーを「経済的に自立した主力電源」にすることを目指すとしています。

経済産業省は16日に審議会を開いて「エネルギー基本計画」の新たな案をまとめました。

今回の案は、「パリ協定」を踏まえて期間を従来の2030年から2050年に広げ、脱炭素化に挑戦するとしています。
そのうえで、太陽光などの再生可能エネルギーは発電コストを国際水準まで引き下げ、「経済的に自立した主力電源」とすることを目指し、天候に左右されるといった課題の解決を図るとしています。

また原子力は「脱炭素化の選択肢」とし、技術開発を進める一方、可能な限り依存度を下げる方針は維持するとして、原発の新設や増設は盛り込まれませんでした。

さらに二酸化炭素の排出量が多い石炭火力は、効率が低い発電所を除けば、維持する内容になっています。

一方、電源の割合を示すエネルギーミックスについては、今回は従来の内容を見直さず、再生可能エネルギーを22%から24%、原子力を20%から22%、火力を56%程度とした目標を維持しています。

これに対しては、審議会の委員からも「見直すべきではないか」という意見が出され、特に再生可能エネルギーは、活用が進むヨーロッパなど世界的な流れからは遅れているのでないかといった指摘が予想されます。

経済産業省は今回の案について広く意見を聞いたうえで、7月中にも閣議決定したいとしています。

■専門家「3年間の猶予が日本に許されるのか懸念」

エネルギー基本計画の新たな案について、エネルギー政策や国際的なエネルギー情勢に詳しい日本総合研究所創発戦略センターの井熊均所長は、「再生可能エネルギーが中心的な電源だというが、世界中では既定路線だ。そうした議論は終わっていて、それをどうやってやるのか言及がもっとあるべきだ」と指摘しています。
そのうえで、「国際的には再生可能エネルギーのコスト低下や、蓄電池やAI=人工知能などの技術開発も進むと見られ、果たして次回計画が策定されるまでの3年間の猶予が日本に許されるのか懸念している。計画は計画として、関係省庁が問題意識をもって日本のエネルギーシステムを作り、関連産業が競争力をもつためのプランをどんどん立ち上げていくべきだ」と話しています。

■主力化のカギは蓄電

再生可能エネルギーは発電量が天候に左右されることが大きな課題です。
このため蓄電池を活用し、発電した電気を蓄えて再生可能エネルギーの弱点を補おうという取り組みが始まっています。

熊本市にある太陽光発電所は、1億円余りをかけて蓄電池を設置しました。
九州では太陽光発電の導入がこの5年で7倍に急増して、日によっては発電量が需要を上回って、発電を一部、止めざるをえない日も出てくると予想されています。

こうした中、この発電所では日中に発電した電気を蓄電池にためて、発電できない夜間でも送電できるようにしています。

また、こうした蓄電池などを一体的に活用する実証事業も始まっています。

ソフトバンクグループは、九州にある蓄電池など300か所近くに通信装置を設置し、一体的に運用して、太陽光発電の余った電気を地域全体で活用する取り組みを進めています。

担当しているSBエナジーの西島栄伺さんは「蓄電池や電気自動車の利用が進めば、うまく活用することで、再生可能エネルギーの課題が解消できる」と話しています。

ただ、蓄電池はコストが高いのが現状で、今回のエネルギー基本計画の新たな案でも、コストの引き下げに向けた対策の必要性が盛り込まれています。

5月16日 17時50分
NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180516/k10011440361000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_009