千葉県と山口県の中学校で今月、理科の実験中に生徒が体調を崩して病院に運ばれる事故が相次いで起きた。実は、同じような事故がこれまでにも全国各地の中学校で発生。事故防止のため、県教委が実験方法の見直しを求めたケースもある。実験は毎年5〜6月に行われることが多く、現場の教員からも改善を求める声が上がっている。

にも千葉県野田市立木間ケ瀬中で7人が搬送された。昨年は埼玉、長野、大阪、広島の各府県の中学生数十人が病院に運ばれた。症状は、のどの痛みや吐き気などで、いずれも軽かったが、過去には硫化水素中毒と診断されて入院したケースもあった。報道された事例など、過去3年間に少なくとも10都府県で起きている。

 実験は中学2年のカリキュラムとなっており、例年5〜6月に行われることが多い。全5社の検定教科書には、実験例とともに、手であおいでにおいを確認することや、換気をよくすることが記されている。文部科学省は事故件数をまとめていないが、相次ぐ事故を受け、昨年改訂の学習指導要領解説に「適切な実験の方法や条件を確認する」との文言を付け加えた。

 埼玉、長野、広島の3県では昨年5月、複数の中学校で事故が起きたことを受け、県教委が市町村教委に通知を出した。教員が実験を行うよう検討することや換気について留意するよう求めている。

 教師歴40年の前橋市立第七中学校の富田尚道教諭(61)は昨秋、理科教育の民間組織「科学教育研究協議会」が発行する雑誌「理科教室」に、この実験の危険性について投稿した。「実験自体の安全性が問題視されてこなかったのは重症化した事例がなかったせいではないか」と警鐘を鳴らす。

 富田教諭は事故に結びつきやすい要因として、理科室で実験が続いて有毒な気体が室内にこもったり、実験の過程で二酸化硫黄を吸った後に硫化水素をかぐことで相乗作用を及ぼしたりすることで体調不良になる可能性を指摘する。

 事故を無くすために、場合によっては、一般的な空調設備しかない中学校の理科室での生徒による実験は取りやめ、教師が実験を示してみせる▽実験の動画を見せる▽においの確認は微量で体験させる――などを提唱。「発生する気体が及ぼす影響は生徒によって違う。持病があったり、風邪だったりする場合は特別な配慮も必要だ」と話している。(上田学)

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