http://www.bbc.com/japanese/44234471

2018/05/24
北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は24日、マイク・ペンス米副大統領の言動を「愚か」と非難し、外交が失敗した場合には「核による最終決戦」の可能性を警告した。

崔氏は、北朝鮮政府は米国に対話してほしいと「お願い」などしないし、会談に出席するよう説得もしないと述べた。

米国と北朝鮮は両国ともここ数日、6月12日に予定されている米朝首脳会談が延期、あるいは中止となる可能性があると警告している。

北朝鮮は、米国が北朝鮮に対し核兵器の放棄を一方的に主張した場合、会談への参加を再考するだろうと述べた。
ドナルド・トランプ米大統領は22日、会談実現には北朝鮮が一定の条件に応じる必要があると釘を刺した。

ペンス氏は「政治的なまぬけ」
崔外務次官は過去10年にわたり、対米外交の場にたびたび関与している。
ペンス氏が北朝鮮は「リビアのように終わるかもしれない」など発言したことについて、崔氏は北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)を通じて、「許容できない、厚かましい発言」だと批判した。
「米国政策に関与している者として、あのような無知で愚かな発言が米副大統領の口から噴出したことに、驚きを抑えられない」と崔氏は述べた。

崔氏は、「米国が我々と会議室で会うか、核対核の最終決戦で対決するのかは、完全に米国の決断と振る舞いにかかっている」と警告した。
ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も先週、北朝鮮の検証可能な非核化に「リビア方式」が適用される可能性があると述べ、北朝鮮を怒らせた。
ボルトン氏のこの発言を受けて、金桂冠(キム・ケガン)第1外務次官は米朝首脳会談中止を警告する談話を発表している。

<解説>「慎重な外交には慎重な情報発信が必要」――ローラ・ビッカー BBCニュース(ソウル)

さて、予定されている米朝首脳会談の数週間前になって、またしても中傷合戦と核戦争の危機に舞い戻ってきた。
ペンス副大統領を非難したのは、北朝鮮政界の有力者だ。崔氏は金正恩(キム・ジョンウン)氏の最側近の1人で、談話は金氏自身にも承認されたはずだ。

北朝鮮にありがちな、典型的な力の駆け引きだという意見もあるだろう。しかし、確実に避けられたことでもある。
北朝鮮は先週、リビア方式の非核化と言われて、強く反発した。痛いところを突かれたかのようだった。なによりも、リビアのカダフィ体制は崩壊しカダフィ大佐は殺されたというのが、第一の理由だ。さらに、北朝鮮は自国の核兵器開発がリビアよりはるかに進んでいると認識しているのも、別の理由だ。
そのため、北朝鮮とリビアを同じ文脈で語ることすら深刻な侮辱になり、米政府は自分たちにしかるべき敬意を示していないと、北朝鮮政府は感じているのかもしれない。

北朝鮮はまず一度、米国に警告した。それでもペンス氏は、またしても北朝鮮とリビアを比べてみせた。慎重な外交には慎重な情報発信と慎重な言葉遣いが必要だ。トランプ政権はこの点において規律を欠いていると、北朝鮮が感じているのは明らかだ。
北朝鮮政府が、ペンス氏やボルトン氏と同じような発言をしているトランプ大統領を標的にしないと判断したのは興味深い。大統領本人ではなくその周囲に罵倒を投げつけている北朝鮮は、まだ首脳会談の可能性を手放す気にはなっていないのかもしれない。

(英語記事 North Korea calls US Vice-President Pence 'stupid')