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5月30日 22時28分
「アダルトグッズメーカーが介護の分野に進出」と聞いて、あなたは何を思うだろうか。いったい誰がアダルトグッズを使うのか。単なる話題づくりではないか。さまざまな疑問や違和感を覚える人も多いのではないだろうか。しかし現場を取材してみると、そこに横たわっていたのは、高齢化が進む一方でなかなか正面から話す機会がない「高齢者の性」の重い現実だった。(科学文化部記者 国枝拓)

“アダルトグッズと介護”異例のコラボ

「アダルトグッズメーカーが介護事業者と提携することになった」

取材先から知らせを受けた私は、正直、驚きと戸惑いを隠すことができなかった。

介護を受ける高齢者にとってアダルトグッズは縁遠いものと感じたからだ。

しかし、話を聞いてみるとメーカー側も介護事業者側も大まじめなのだという。なぜそのようなことになったのか、話を聞かせてもらうことにした。

訪れたのは、全国で入浴に特化したデイサービスを展開する介護事業者「いきいきらいふ」。

その日は「高齢者の性欲とどう向き合うか」をテーマに、全国の店長クラスを集めた研修会が開かれていた。参加者は男女およそ30人。

それぞれ、自慰行為に使うアダルトグッズを手にしていた。

筒状のものや卵形のものなど、用途や男女の別に応じて種類もさまざまだ。

「中にはローションが入ってます」
「これは勃起しなくても快楽が得られるように開発されました」
「握力が弱くても使えるよう工夫しています」

メーカーの担当者から使い方の説明を受ける表情は真剣そのもの。

近くこれらのグッズを希望する施設利用者に販売し、自分で性欲を処理してもらう計画だ。高齢者介護の業界では初めての試みだという。

彼らがここまでの取り組みに踏み切った背景には、現場が直面しているのっぴきならない事情があった。

深刻な性的トラブルの現状

「いきいきらいふ」が社員に行ったアンケート結果がある。

施設を利用する高齢者から受けたセクハラを含む性的トラブルの実態調査だ。

「チューしちゃおうかな、おしりタッチしようかなと言われる」
「ホテルに行こうと言われた」
「胸を触られた」
「体を洗っていたら『元気になっちゃうな』と勃起した陰部を見せられた」

回答した人のおよそ4割が性的トラブルを経験していたほか、トラブルに当たるかどうか判断できないとして「わからない」と答えた人も含めると、その割合は半数に達していた。

こうした行為に及ぶ高齢者は、認知症など判断力の衰えた人たちばかりではない。経営陣が「ショックでした」とうなだれるほどの衝撃的な内容だった。

高齢者の性、苦悩する現場

「高齢になると、性欲や性的な気持ちはなくなっていくものなんだというイメージでした。でも働き始めてからイメージが大きく変わりました」

江東区の店舗で入浴介助を担当する山内粧也香さん(25)も、性的トラブルの経験者だ。
(リンク先に続きあり)

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