街のあちこちで見かける「トランクルーム」など、自宅外での収納サービスが首都圏を中心に急速に広がっている。市場は年4〜8%のペースで成長し、2020年には市場規模が800億円に迫るとの試算も。狭い家で収納に悩むより、衣類も趣味のコレクションも「すぐに使わない物は外で収納」が浸透しつつあるようだ。(藤森恵一郎)

 「4LDKから3LDKに引っ越し、荷物が入り切らなかったので」「キャンプ用品など置き場に困るものを預けたい」

 業界大手エリアリンク(東京)にはトランクルーム利用者からこんな声が寄せられる。生活用品だけでなく、着られなくなった子ども服など思い出の品を保管する人もいる。

 同社は首都圏を中心に、兵庫や大阪、愛知など都市部で出店を加速。室数は5年間で倍増し、17年末には全国で8万室を超えた。兵庫県内では屋外のコンテナ型倉庫を中心に約3500室を展開。利用料は地域によって違うが、神戸市西区では1階2畳で月額6千円、同3畳で1万7千円ほどだ。

 矢野経済研究所(東京)の調査を基にしたエリアリンクの試算では、国内の収納サービスの市場規模は12年に455億7千万円、17年に657億円。20年には777億9千万円と右肩上がりが見込まれる。

 外資系大手キュラーズ(東京)のスティーブ・スポーン社長は「米国の市場は1970年代から年平均10%の急成長を経験した。日本の市場は00年頃からで、今後20年は伸び続けるだろう」と予測する。米では10世帯に1世帯が利用するが、日本はまだ300世帯に1世帯。「交通量が多く、人目に付きやすい幹線道路沿いなどを狙い出店している」と認知度アップに力を入れる。

 都心への人口流入と不動産価格の上昇に伴う居住スペースの狭小化で荷物の収納に悩む人たちに、収納サービスは「家の近所で24時間使えるコンビニ感覚で利用できると認識されつつある」と同研究所。「拠点が都市部の生活圏近くに急拡大しており、さらに需要が掘り起こされている」と分析する。

 かつてトランクルームといえば薄暗いイメージもあったが、スポーン社長は「店舗にスタッフが常駐している。セキュリティーは高く、室内は明るく清潔に保たれている」とサービスの質にも自信を見せる。

 首都圏では防災面での期待もある。エリアリンクは、17年に東京都大田区と防災協定を締結。帰宅困難者向け備蓄品の保管場所として屋外のコンテナ型倉庫1室を無償提供した。同社管理本部の佐藤徹二さんは「災害時のリスク分散という観点からも需要はある」と話す。

【収納サービス】自宅やオフィス以外に荷物を置くため、利用者が料金を支払い、スペースを借りるサービス。「トランクルーム」「レンタル収納サービス」など、業者によって呼び方はさまざま。ビルや専用建物など屋内にスペースを設けるタイプと、屋外のコンテナタイプがある。常駐スタッフや駐車場の有無などサービス内容も多様化している。




神戸新聞NEXT 2018/6/2 14:50
https://kobe-np.co.jp/news/sougou/201806/0011317669.shtml