自動車メーカーの「スズキ」が中国の自動車メーカーと提携を解消する協議に入ったことが明らかになりました。スズキとしては、世界最大の自動車市場の中国から撤退し、高いシェアを持つインド市場に経営資源を集中する狙いがあるとみられます。

関係者によりますと、「スズキ」は、中国での現地生産から撤退する方針を固め、合弁相手の中国・重慶市の自動車メーカー「長安自動車」と提携を解消する協議に入りました。

スズキは20年以上にわたって中国で乗用車の生産を行ってきましたが、今月になって別の中国企業との合弁を解消すると発表していて、長安自動車との提携が解消されれば、世界最大の自動車市場、中国から全面的に撤退することになります。ただ、提携の解消をめぐる協議は、難航する可能性もあります。

中国では、経済成長に伴って高級車や大型車の人気が高まっていて、スズキが手がける小型車の販売は伸び悩んでいました。また、中国では、来年から自動車メーカーに電気自動車の一定の生産を義務づける規制が導入されますが、スズキは、電気自動車を生産しておらず、こうした規制強化も要因とみられます。

スズキとしては、中国から撤退することで、高いシェアをもつインド市場に経営資源を集中させる狙いがあるとみられます。

■世界4位のインド市場 拡大が見込まれる

スズキは、海外市場では、6年前にアメリカでの自動車の販売から撤退しました。これに続いて、世界最大の自動車市場、中国からも撤退する方針を固めた背景には、中国、アメリカ、日本に続いて世界4位と言われるインド市場への注力があります。

スズキは昨年度、主力としているインド市場で、過去最高の165万4000台を販売し、50%という圧倒的なシェアを持っています。インドは、今後も自動車市場の拡大が見込まれていて、スズキとしては、経営資源を集中させる必要があると判断したものとみられます。

一方、インドでも大気汚染の深刻化で、環境規制が強まっていて、スズキは今後、自動車向け電池の製造工場を現地に建設してハイブリッド車の生産や販売を強化することにしています。

鈴木修会長は先月10日の決算会見でインド事業について「電気自動車やハイブリッド車など、商品力を高めるとともに、販売網の整備にも力をいれる」と述べていました。

■中国でEVシフト スズキは中国向けEV開発せず

中国の新車販売は、2009年にそれまでトップだったアメリカを抜き、世界最大の自動車市場となりました。去年1年間の新車の販売台数はアメリカの1723万台を大きく上回る2887万台まで増え、9年連続で世界一となっていて、今後も伸びが見込まれています。

日本の自動車メーカーでは最も多い日産自動車の去年の販売台数が151万台で前の年を12%上回り、世界販売の4分の1を占めていて9つ目の工場の建設も検討しています。ホンダにとっても世界販売の4分の1を占めるなど重要市場になっています。

一方、スズキは日本のメーカーの中では1995年にいち早く中国で乗用車生産を始め、ピークの2011年に30万台近くを販売したものの中国で高級車や大型車の人気が高まる中、去年はピークの3分の1程度まで落ち込んでいました。

さらにその中国市場でいま、大きな変革が起きています。電気自動車=EVへのシフトです。中国政府は中国で自動車を生産する企業に対して、一定の割合をEVなどのエコカーにすることを義務づける厳しい規制を来年から導入します。

規制の導入は環境対策に加えて、EVがガソリン車などよりも構造がシンプルで参入しやすく、日本、アメリカ、ヨーロッパのメーカーに対して中国メーカーが競争力を持てることもあります。このため、日産は今後2年間で中国で新たに6車種のEVを投入する計画を打ち出しています。

また、ホンダは初めての量産型のEVをことし中に中国に投入するほか、トヨタも2020年までにEVを投入する計画を明らかにするなど最大の自動車市場に対応していく方針です。

しかし、スズキは中国向けのEV開発はしておらずこうした規制の強化も撤退の方針を固めた背景にあるものとみられます。

2018年6月19日 1時49分
NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180619/k10011484521000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_007