更新日時 2018年6月19日 15:03 JST

米ニューヨーク市では、ウーバーなどライドシェア会社の台頭がマンハッタンの交通渋滞を招いている。これまで以上に多くのタクシー運転手らが先を争って通勤客や居住者、観光客を獲得しようとしているためだ。ライドシェアの台頭はタクシー業界への大打撃を意味するものでもあり、運転手の自殺はここ7カ月で6人に上っている。

  3年前、ニューヨークのデブラシオ市長は交通渋滞への影響を分析するため、ウーバーの成長を抑制する一時的制限導入を目指したが、同社が多額のテレビ広告を打ち、ロビー活動を展開したことから、市議会はその案を廃案とした。当時、ニューヨーク市街を走るアプリベースの輸送車両は1万2600台だったが、現在では8万台に増加。1カ月当たり2000台増えたことになる。

  こうした急増を受け、タクシー運転手は生計が立たなくなり、交通渋滞で市内の経済活動に多大な損害が生じている。2期目に入ったデブラシオ市長は、これら2つの大きな問題を解決する責任は市議会にあると指摘しており、市議会は両方の問題に対処する新たな規制を検討しているが、対策のめどは立っていない。

  2015年にウーバー規制案の廃案に関与したジョンソン市議会議長はインタビューで、「私は何らかの制限を受け入れる姿勢だが、あまりに多くのウーバー・ドライバーが既に市街を走行している現状では、手遅れかもしれないと懸念している」とコメント。「望むこと全てを実現できるかどうか不安がある」と付け加えた。

  ニューヨーク・タクシー労働者連合の広報担当、バイラビ・デサイ氏は、ウーバーの台頭が伝統的なタクシー業界を打ちのめしていると指摘。「徹底した競争になっている。政治的な失敗による金銭的な危機だ。政治的な対策が必要だ」と付け加えた。

  ウーバーの広報担当、ジェーソン・ポスト氏は、同社がニューヨーカーに多くの仕事と交通手段の選択肢を提供していると述べ、「車両の増加はマンハッタン以外の乗車需要の伸びに対応している」と指摘。規制すれば「イエローキャブに長年、見向きもされなかったマンハッタン以外の多数の乗客に悪影響を及ぼすだけだろう」と述べた。

  ニューヨークではタクシー営業に許可証「メダリオン」が必要で、これをローンで購入し返済する必要に迫られている運転手は特に切羽詰まっている。メダリオンは1万3500枚に制限されているが、市内を走るウーバーやリフトの車両数に上限はない。

  メダリオンはミッドタウンの交通渋滞を招いていたタクシーの数を抑制するために1937年に導入された。10年前は100万ドル(約1億1000万円)の値段が付いたが、今では買い手を見つけられないと話すオーナーもいる。

http://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-19/PAJL3D6KLVRA01