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死亡の老夫婦 留守番電話に「助けて」
2018年7月11日 18時30分豪雨 被害

老夫婦が留守番電話に残した「助けて」のメッセージは届きませんでした。

今回の豪雨で、大きな被害が出た岡山県倉敷市真備町。氾濫した川から水が押し寄せ国土地理院の推計では、浸水の深さが最大で4メートル80センチ程度に達したとみられています。

その真備町では、今月11日の夕方までに、49人の死亡が確認されました。

関係者によりますと、このうち、西原俊信さん(86)と妻の明子さん(84)は今月8日、自宅で倒れているのを捜索にあたっていた自衛隊員が見つけたということです。

俊信さんは、目や足が悪く、明子さんは俊信さんのデイサービスに付き添ったり、自宅で介護したりしていたということです。2人の遺体が見つかったのは平屋建ての住宅の台所でした。妻が、体の悪い夫を抱きかかえるような状態で発見されたということです。

夫婦の次男の幹夫さん(54)は今月7日の朝、母の明子さんに電話をかけたそうです。

「水は来ていないから大丈夫」 明子さんは、電話口でそう話したといいます。

ところが、その後、事態が悪化します。明子さんは午前10時57分、近所に住む田原康子さんに電話をかけていました。田原さんは、当時、電話に出られず、留守番電話には「水があがってきているので、役場に救助に来ていただくようにお願いできませんか」というメッセージが残されていました。

ただ、その時、田原さんは自宅が浸水し、避難を余儀なくされていました。明子さんのメッセージに気づくことはできませんでした。

そのころ、明子さんは、知り合いなどに繰り返し電話をかけていたことが残っていた携帯電話の履歴からわかりました。

その後、7日の午後1時すぎ、明子さんは幹夫さんに電話をかけてきました。この日の朝の電話で「水は来ていないから大丈夫」との内容が「水が胸の高さまで来ている」と状況が切迫したものに変わっていました。

電話を受けた幹夫さん。しかし、30キロほど離れた岡山県玉野市で暮らしているため記録的な豪雨の中、すぐに、助けに行くことはできませんでした。

関係者によりますと、西原さん夫婦が亡くなったのは、このおよそ2時間後、午後3時ごろ。死因は水死とみられています。

亡くなった父と母について幹夫さんは、涙を流しながら、こう語りました。

「いろんなことを教わった厳しくも優しい両親でした。亡くなったと聞いたときは『やっぱりダメだったのか』と思いました。自分が助けられたらよかったのですが、あの豪雨の中でどうしようもありませんでした。『本当にごめんなさい』という気持ちです」

また、明子さんが携帯電話にメッセージを残した田原康子さんもやりきれない思いを抱えていました。

「留守番電話を確認したのは今月8日になってからでした。ほんとうに仲むつまじい夫婦で、『避難するように声をかけていれば』という思いが消えません」