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山岳遭難なぜ多発?登山家と探る 滋賀・比良山系
08.06 17:54京都新聞

 夏山シーズン真っ盛り、11日は「山の日」だ。滋賀県も登山者に人気の山が多いが、今年は県内の遭難事故が過去最悪のペースで発生している。多いのは比良山系や鈴鹿山系。登山道や道標も比較的整備されている山域で遭難が多発する原因を、登山家とともに現場で探った。

■地図とコンパスは必携、スマホアプリも活用

 滋賀県警によると、県内の山では今年1月〜7月末、47件56人が遭難し、6人が死亡。遭難件数が過去最悪だった昨年の同時期は35件46人(うち死者2人)で、さらに上回るペースで発生している。原因は道迷いが24人で、滑落が10人、転倒が8人と続く。山域別では、比良山系と鈴鹿山系で全体の6割以上を占め、両山域の死者は5人にのぼる。

 1日、比良山系で救助や登山道整備に取り組む「レスキュー比良」の宮永幸男さん(69)=京都市南区=と比良山系の白滝山(1022メートル)に登った。このルートは大津市葛川から白滝山を経て、びわ湖バレイや名瀑(めいばく)に続き人気がある。

 まず気になるのは、登山道が不明瞭なこと。道の周辺に下草がほとんどない。シカに食べられたとみられ、どこでも歩けるように見える。宮永さんは「比良も鈴鹿も、10年ほど前から道が分かりにくい場所が増えた。特に下山時に道に迷いやすい」と指摘する。

 また、登山道は台風や豪雨、大雪による倒木や斜面崩壊によって、毎年迂回しなければならない地点が発生する。そのときにルートを外しやすいという。

 宮永さんは地図やコンパスは必携とした上で、「地形図やGPS機能を備えたスマートフォンのアプリで現在地を把握しながら進まないと。迷ったときに地図を見るのでは遅い」と警鐘を鳴らす。

■迷った時、どうすれば

 それでも、もし迷ってしまったら、どうすれば良いのか。

 山岳遭難を担当する県警地域課は「翌日の予定を気にしたり、体力不足からとにかく下ろうとする人が多い。そして、水流沿いに下れると思いがち」という。しかし、比良や鈴鹿の沢は険しく、地図に載っていない滝も多い。沢伝いに下ることは、滑落の危険が高く「ほぼ不可能」という。

 4月、高島市の比良山系で70代夫婦が遭難した。5月に登山道から離れたがけ下の沢で、夫婦の遺体が見つかった。下山路を誤り、滝や崖が続く沢に降りた後、滑落したとみられる。

 沢筋は救助も困難になる。ヘリでつり上げられる場所まで遭難者を運ぶ必要があり、リスクが高いという。宮永さんは「迷ったと思ったら、つらくても登る。通報は家族ではなく110番にして、スマホのGPSがあれば位置を正確に伝える」とアドバイスする。

 今年の遭難47件のうち、登山届が出ていたのはわずか7件。県警は「計画や準備をしっかりした上で、登山届を必ず提出してほしい」としている。

【滋賀の夏山登山の注意点】

◇地形図とコンパスに加え、下山が遅れることを想定してヘッドランプは必携。

◇山行記録などを見て十分な計画を。過去に連れて行ってもらった山を「自分1人でも行ける」と過信しない。

◇夏は午後に雷雨が多く、行動は昼すぎには終えるつもりで。

◇救助を求める場合はまず110番。家族と通話している間にスマホの電池を消耗する。

◇迷った場合は上に登る。沢筋では下山できない。

◇登山届は必ず提出する。登山口のポストよりも、滋賀県警へインターネットや郵送で提出するのが望ましい。